咳は無理に止めなくてもいい

咳には有効性が裏付けられた良い選択肢がないものの、咳がひどくて眠れない場合にはいわゆる「せきどめ」を試してみてもいいと思います。ただ、咳は体から外敵を追い出す防御反応ともいえるため、無理に止める必要がないことも知っておくと良いでしょう。

山田 悠史『健康の大疑問』(マガジンハウス新書)
山田 悠史『健康の大疑問』(マガジンハウス新書)

そして何より、症状が軽ければ「薬を飲まない」という選択肢もあわせもっていただければと思います。まずは体をよく休めることが大切です。氷枕や生姜湯のように、あなたのおばあちゃんが教えてくれた知恵もまた、あなたを助けてくれるかもしれません。

風邪薬は、風邪を治す薬というわけではなく、症状を軽くするための薬です。

症状がつらい場合には、その症状に合わせて薬を使い、症状が軽い場合には薬を無理に使う必要はなく、よく休みをとることが大切です。

(注1)Monto AS. Studies of the Community and Family: Acute Respiratory Illness and Infection. Epidemiol Rev 1994; 16: 351–73.
(注2)Turner RB. Epidemiology, Pathogenesis, and Treatment of the Common Cold. Ann Allergy, Asthma Immunol 1997; 78: 531–40.
(注3)Hemilä H, Chalker E. Vitamin C for preventing and treating the common cold. John Wiley and Sons Ltd, 2013.
(注4)Fendrick AM, Monto AS, Nightengale B, Sarnes M. The economic burden of non-influenza-related viral respiratory tract infection in the United States. Arch Intern Med 2003; 163: 487–94.
(注5)Bachert C, Chuchalin AG, Eisebitt R, Netayzhenko VZ, Voelker M. Aspirin compared with acetaminophen in the treatment of fever and other symptoms of upper respiratory tract infection in adults: a multicenter, randomized, double-blind, double-dummy, placebo-controlled, parallel-group, single-dose, 6-hour dose-ranging study. Clin Ther 2005; 27: 993–1003.

山田 悠史(やまだ・ゆうじ)
米国老年医学・内科専門医

慶應義塾大学医学部を卒業後、日本全国の総合診療科で勤務。2015年から米国ニューヨークのマウントサイナイ医科大学ベスイスラエル病院の内科、現在は同大学老年医学・緩和医療科アシスタントプロフェッサーとして高齢者診療に従事。フジテレビ系列「FNN Live News α」のコメンテーター、ニュースメディア「NewsPicks」などで活躍するほか、コロナワクチンの正しい知識の普及を行う一般社団法人コロワくんサポーターズの代表理事、カンボジアではNPO法人APSARAの常務理事も務める。著書に『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』(講談社)がある。