風邪薬の副作用

風邪薬に関して、もう一つ忘れてはいけないことがあります。それは、どんな薬にも必ず副作用のリスクがあるということです。

例えば、どんな薬にもアレルギー反応が起こるリスクがありますし、多くの風邪薬で用いられるイブプロフェンならば、飲みすぎると胃や腎臓に障害を受ける可能性があります。

「総合感冒薬」に含まれる抗ヒスタミン薬は、眠気やだるさという副作用があります。私個人でも、総合感冒薬を飲み続ける患者さんが「だるさが治らない」と受診してきて、薬を中止したことで治ったという場面を何度も見ています。治すために飲んでいるつもりだった薬で、かえって体調が悪くなることがあるのです。

また、風邪に対する抗菌薬の処方はさらに深刻な問題です。ウイルスの感染症である風邪に全く有効でない抗「菌」薬には、アレルギーだけでなく、下痢や吐き気といった新たな問題を生み出す危険性もあります。そして、無駄に使われた抗菌薬によって、体にその抗菌薬が効かない細菌が誕生する可能性もあります。これは「耐性菌」と呼ばれ、世界中で急速に増加している大きな問題です。

体調がすぐれず、ソファーに座っている女性
写真=iStock.com/kokouu
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風邪薬を飲むべき時は

薬は適材適所、利益と副作用のバランスを考え、利益が副作用のリスクを上回る時に使うのが基本です。利益がないか、もしくは小さい時には、副作用の方を重く見るのが妥当でしょう。そのような天秤と物差しを持つことが大切なのです。

また当然ですが、風邪薬にもお金がかかります。1種類の薬ならまだしも、病院で4種類、5種類の薬を処方されてしまえば、数千円の支払いになるかもしれません。米国での調査では、風邪の検査と治療で消費されたお金は実に年間170億ドルにも上ったとの試算があるほどです(注4)。風邪のたいした額ではない処方箋も、国家全体で見れば、大きな経済負担になります。

では、どのような時に風邪薬を内服すればよいでしょうか。

率直に答えるなら、「症状が強い時」です。そして、その「症状が強い」は主観で良いと思います。どんな薬を選択するかは、あなたがこれまで効果が強く、副作用を経験したことがないと思うものでいいと思います。

科学的な根拠という点では、アセトアミノフェンと呼ばれる解熱鎮痛薬は、頭痛を含む全身の痛みや発熱によるだるさを改善することが臨床試験でも示唆されており(注5)、ある程度広く勧められる選択肢かもしれません。

また、いわゆる「総合感冒薬」や「鼻水どめ」は、眠気を起こす「抗ヒスタミン剤」と呼ばれる薬剤が含まれるため、運転する前などは避けるべきですが、裏を返せば、寝る前に飲むのなら睡眠の助けとなるかもしれません。