ジョブ型実例①【資生堂】

キャリア自律を促し、世界での活躍を後押しする

2022年、創業150周年を迎えた老舗、資生堂がジョブ型人事制度を全社導入(美容職・生産技術職は除く)したのは2021年1月のこと(管理職向けには15年に導入済み)。

資生堂 人財本部 人財企画部長 田中順太郎さん
資生堂 人財本部 人財企画部長 田中順太郎さん(撮影=鈴木愛子)※肩書きは、取材当時

資生堂は、ジョブファミリー(JF)というグループ分けを中心とした独自のジョブ型を導入している。

まず各社員は約20領域あるJFのどれかに所属する。JFは、たとえば、セールス、IT、経営戦略、品質保証、HR(人事)、研究開発などであり、キャリアおよび専門性の軸となる。各社員は自分が所属するJFにおいて、職務内容と役割ベースで決められたジョブグレード(JG)によって格付けされる。JGは一般社員は4段階、管理職は6段階で、計10段階ある。

「格付けは、その人がどんな職務遂行能力を持っているかではなく、どんな職責と役割を担っているかで判断します」と話すのは、同社人財企画部長の田中順太郎さん。

格付けのものさしが「人」ではなく、「職務(ジョブ)」になっていることに留意してほしい。「できる人」ではなく、「大きな職務を担っている人」ほど、JGが上になるのだ。

そのうえで、各社員が担う職務内容や必要なスキルはジョブディスクリプション(JD)として明示されているが、それは組織の最小単位であるグループ(課)単位でのものとなっている。「当社の社員は日本だけで約2万3500人、全世界で約4万人います。うちは組織変更が多く、各自にJDを提供するとなると、書き換えだけで大きな手間になりますから、課単位での作成にとどめています」

もう1つ、そのグループごとに、ファンクショナル・コンピテンシー(FC)を定めた。職務遂行に必要となる専門能力やスキルを明文化したものだ。

資生堂JF(ジョブファミリー)型の概要図