日本人の7割以上は1日3食摂っている。これは正しい食習慣なのか。10万人の胃腸を診てきた消化器専門医の福島正嗣医師は「1日3食や、毎日決まった時間に食事を摂るのは、消化管の生理を無視した行為。胃腸の調子を整え、アンチエイジングにも効果的な食事の摂り方があります」という――。

※本稿は、福島正嗣『朝食にパンを食べるな』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

1日3食は腸によくない?

現在は世界中で、1日3食という食事スタイルが主流になっています。複数の調査を見てみても、日本人の7割以上は1日3食摂っていることがわかります。

しかし、本当に1日3食は、体にとっていいのでしょうか?

歴史的に見て、1日3食摂るようになったのは、思いのほか最近のことです。おそらく原始の頃の人間は、朝食は食べていなかったでしょう。江戸時代以前にさかのぼってみても、1日2食だったという記録があります。

1日3食という食生活は、古来からの習慣ではなく、穀物をふんだんに取り入れることによって生じた食習慣だと考えられます。

タンパク質と脂質を中心とした糖質制限食を実践した場合、血糖値の乱高下が少ないため、極端な空腹感は生じません。ところが、穀物を中心とした食事をした場合、血糖値の乱高下が起こり、異常な空腹感が生じます。

私は10年前に糖質制限を始めたのですが、炭水化物を食べていた頃は1日3食どころか、空腹を感じるときには4食だった時期もあります。

ところが、糖質制限を始めてからはそうした異常な空腹感はなくなり、現在では1日1食もしくは2食となっています。つまり、1日3食は穀物を大量に消費することによって生まれた食習慣であり、1日3食食べたほうが健康であるという理屈は成り立たないと考えます。

1日3食という食生活は「脳がつくり出した習慣」であって、「腸がつくり出した習慣」ではありません。

私自身は、1日3食食べていた時期よりも現在のほうが体は軽く感じますし、食事に振り回されないため仕事の効率が上がり、自分の趣味に費やす時間も増えました。

朝食は摂らないほうがいい?

朝食に関しては諸説ありますので、一概に朝食を食べたほうがいいか悪いかはいえません。それは、その人の日常生活のリズムにもよるためです。

たとえば、夜遅くに食事を摂る人は、消化時間を考えると朝食は摂らないほうがいいでしょう。一方で、夕食は17時までに食べ終わるという人にとっては、むしろ朝食は必要だと考えます。

胃腸科医としてアドバイスするなら、原則として朝起きたときにお腹が空いていない状況で朝食を食べることは、おすすめしません。また、朝食を食べるなら胃腸への負担を考慮して、米やパンといった炭水化物以外のものを食べるのが原則で、炭水化物を摂るぐらいなら朝食はなしにしたほうがいいと考えます。

ちなみに、「朝食を摂らないと頭が回らないから絶対に食べるべき」といった説は医学生理学的に見て間違っていますし、体のことを考えているというより商業主義的な発想だと思われます。

とはいえ、もし朝食を摂るのなら、以下のような食材が胃腸にはいいでしょう。

・食べても影響が少ないもの…卵料理、ハム(加熱はしない)、野菜、ヨーグルト(プレーンのもの)、ナッツ、チーズ
・避けるべきもの…パン、パスタ、うどん、シリアル、サンドイッチ、パンケーキ、クッキー、スコーン
・少量なら影響が少ないもの…玄米、おにぎり、オートミール、果物

健康的な食事の概念
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