夫婦がほぼ同時に会社員を辞める選択ができた理由

もう一つ「見える化」して大きな効果があったのは、「どういうところが不安なのか」が具体的な金額で示せるようになったことで、私の不安な気持ちを本当の意味で夫と初めて共有化できたことです。モヤモヤを一人で抱えなくてよくなり、楽になったのを覚えています。

大江英樹、大江加代『定年後夫婦のリアル』(日本実業出版社)
大江英樹、大江加代『定年後夫婦のリアル』(日本実業出版社)

「見える化」して課題が明らかになれば、あとは二人で対策です。

わが家の場合は、私が家を買うために貯めていた金融資産について、それを生活費には一切回さず温存し、さらに少しずつ増やしていけば、将来、私が医療や介護でまとまった資金が必要になってもなんとかなるだろう、ということになりました。

見える化して得られた「安心感」があったからこそ、夫婦して一気に会社員としての立場を捨てるという、崖から飛び降りるような選択をすることができたのです。

老後のお金は、寿命なども影響するため、その収支は本当にわかりません。

それでも、いくつかのパターン(90歳や100歳まで生存した場合など)を具体的にシミュレーションしてみると、霧が晴れたようにスッキリすると思います。

なかには、「金銭的な手当てを考えなければいけないことが判明しモヤっとした」という厳しい現実を見ることになるかもしれません。その場合も、計画していたリフォームや定年時のご褒美旅行などの大きな出費にかける金額を少し減らすといった対策もできます。

出費をした後で「もっと早くわかっていれば○○しなかったのに」というような後悔を避けるためにも、未来に向けた行動を選択できるようにするためにも、50代のうちに老後のお金の「見える化」をしておくことはとても大切だと思います。

大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト

1952年大阪府生まれ。オフィス・リベルタス創業者。大手証券会社で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事。定年まで勤務し、2012年に独立後は、「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるように支援する」という理念のもと、資産運用やライフプランニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行った。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。著書に『投資賢者の心理学』(日経ビジネス人文庫)、『定年男子 定年女子』(共著・日経BP)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)、『お金の賢い減らし方』(光文社新書)など多数。2024年1月没。

大江 加代(おおえ・かよ)
確定拠出年金アナリスト

大手証券会社にて22年間勤務、一貫して「サラリーマンの資産形成ビジネス」に携わる。確定拠出年金には制度スタート前から関わり、約10年間投資教育の他、運営実務のサポート業務に従事した。2012年9月に大江英樹とともにオフィス・リベルタスを設立。2022年9月に代表取締役に就任。現役世代の資産形成・定年前後のライフプラン等をテーマとするセミナーや研修での講演の他、各種マスコミや媒体への寄稿等を行っている。著書に『「サラリーマン女子」、定年後に備える。』、『新NISAとiDeCoで資産倍増』(ともに日経BP社)、『iDeCoのトリセツ』(ソシム社)、『定年後夫婦のリアル』(大江英樹と共著・日本実業出版社)など。