年金だけで老後は生活していけるのだろうか。経済コラムニストの大江英樹さんは「『公的年金なんてあてにならない』と思っている人は多いかもしれませんが、決してそんなことはありません。事実、公的年金だけで生活している65歳以上の人は半数ぐらいいます」という――。

※本稿は、大江英樹、大江加代『定年後夫婦のリアル』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

60歳定年の企業が8割超え

最近は定年を延長したり廃止したりする企業も出てきていますが、まだ世の中の大半は60歳を定年と定めた企業が多いようです。

図表1に示したとおり、定年を廃止している企業はわずか0.5%しかなく、99.5%の企業では一定の年齢で定年を定めていますし、このうち、60歳を定年としているところが81.8%ですから、まだまだ世の中の大半は60歳が定年となっているようです。

昔と違い、現在では定年になっても仕事を完全に引退して働くのを辞めてしまう人は少数派になっています。

総務省の調査によれば60~64歳で働く人の割合は男性で82.7%、女性だと60.6%です(図表2)。これは2013年に高年齢者雇用安定法が改正となり、65歳までの雇用機会の提供が義務化されたためですが、そもそもこの法律が生まれたのは1971年です。

その頃の平均寿命は男性が約69歳、女性は75歳ですので、今は当時よりも12~13年伸びています。であるならば、当時と同じように60歳で仕事を辞めてしまう人が少数になるのは当然といってもよいでしょう。

しかしながら、私は60歳からの働き方は、それまでとはまったく違うものにすべきだと考えています。

ひと言で言うと、「食べるために働くのではなく、楽しむために働く」ということです。

サラリーマン生活が楽しくないのは当たり前

なんだかいきなり抽象的な表現が出てきましたね(笑)。おそらくこれを読んでいる多くの人にとっては、ちょっと意味がわからないかもしれません。

「楽しむために働く」というけど、そもそも仕事って楽しいものなのでしょうか?

私はサラリーマンを38年間やってきましたが、正直それほど仕事が楽しいと思いませんでした。もちろん楽しかった時期はありますが、トータルで考えてみると、つらいことやしんどいことのほうが多かった気がします。

でも、これは当たり前のことなのです。楽をしてお金を稼ぐことはできませんし、特に組織に所属して働くのであれば我慢をしなければならないことも多く、ストレスは溜まりました。

ところが、会社を定年になって10年、今まで手探りで細々と自営業として仕事をしてきましたが、おそらく今までの人生で今ほど「仕事が楽しい」と思ったことはありません。 

その理由は好きなことしかやっていないからです。

自営業は何もしないと仕事は来ませんが、いやな仕事は断ることができます。

会社員は逆です。だまっていても仕事は上から降ってきますが、いやな仕事でも断れません。おそらく、この「仕事に対する拒否権がある」ということが、ストレスなく仕事を楽しめる最大の原因だと思います。