狩りの際、会話が厳禁だった男性は目的のない話に意味を見いだせない

受験の時期は、子供の進路やその先の将来のことを考えると、妻にとっては頭が痛いことがいっぱいだ。自分だけでは解決できないので、夫の意見を聞きたいと思ってもなかなかとりあってもらえないことが多い。

大事な話を聞こうともしない夫に、妻は自分の存在までも否定されたようで怒り心頭。夫婦喧嘩の一番多い原因が、このパターンといえる。妻が相談をもちかけても、夫が聞く耳をもたないことも、動物行動学的に説明できるのだろうか?

「そもそも、女性と男性とでは、脳内の発達している領域が違うことを知っておくことが大切です。一般的に、女性のほうが取り込む情報量が多く、記憶力もいいといわれています。それは、言語を操作する脳の領域が発達しているためと考えられ、男性よりも言葉を理解したり話をするのが得意な傾向があります」と小林先生。

これは狩猟採集時代、女性たちが情報交換をするために日常的に言葉を交わし、人間関係を築いてきたことが影響しているからだ。さらに時を経るごとに、話すこと自体が楽しくなり、話すことで絆を深めていったと想像できるという。

それに対して男性は、狩猟に出かけている間は獲物を捕ることに集中しているため、獲物に関する情報収集は怠らないものの、無駄な会話をする機会は少なかったようだ。それが今でも男性の習性として残り、女性よりも目的を持って遂行する能力が高い一方、目的のない会話には意味を見いだせないというわけだ。

そのため、子供の進路や将来のことについて夫と話をしたいときは、言語脳の発達した妻のほうが歩み寄ることが一番の解決法といえる。小林先生も、「男性と話をするときは、自分が感じたことや思ったことを、やみくもに並べ立てても伝わらないことをまず理解してください。それほどに、男性というのはかわいそうな動物なのです」と男性への理解を訴える。

人類の誕生から現在まで、9割以上は狩猟採集の時代だったことを考えると、その間にできた男女の脳の性差を埋めるよりも、その違いを知って対策を考えるほうがよほど近道というわけだ。