親切は「毎日」より「まとめて」がいい
さらに具体的に、「週に5~6回の親切が、幸福度を上げるのに効果的」であることを明らかにした研究結果もあります。
カルフォルニア大学の心理学者リュボミルスキーらの実験です(*5)。
被験者に、お金の絡まない親切な行為を週に5回、6週間にわたり行うよう依頼しました。1日に5回行うか、1週間かけて5回行うかは、被験者の判断に委ねられました。
すると6週間後、何もしなかった人に比べて、親切を続けた人の方が幸福度が高くなっていました。
興味深いのは「親切にすればするほど幸せになれる」というわけではなかったことです。
実験では「1週間に1度、まとめて5回親切な行動をする」のが一番効果的だったのです。どうやら、毎日親切をするとルーティン化し、刺激が薄れていく=飽きてくるようです。これは「順化」という脳の現象です。
まるで「情けは人のためならず」ということわざを裏付けるような結果ではないでしょうか。
幸福度を高めるためには、遠回りのように見えても、まず他人のことを考え、他人のために動くことが効果的。自分のことで思い悩む暇があったら、「誰かのため」に行動した方が幸福になれるのです。
(*5)Lyubomirsky, S., Tkach, C., and Sheldon, K. M. (2004) . Pursuing sustained happiness through random acts of kindness and counting one’s blessings: Tests of two six week interventions. Unpublished data, Department of Psychology, University of California, Riverside.
1968年、熊本県生まれ。シカゴ大学言語学部博士課程修了。ヨーク大学ロースクール修士課程修了・博士課程単位取得満期退学。専門は、司法におけるコミュニケーションの科学的分析。言語学、法学、社会心理学、脳科学などのさまざまな分野を横断した研究を展開している。テレビのコメンテーターのほか、雑誌、WEBなどでも連載を行う。『最先端研究で導きだされた「考えすぎない」人の考え方』(サンクチュアリ出版)、『誰でもできるのにほとんどの人がやっていない 科学の力で元気になる38のコツ』(アスコム)など、著書は50冊を超える。