ついカーっとなってしまう時に効く孫子の教え

主は怒りを以て師を興すべからず、
将はうらみを以て戦いを致すべからず。
(火攻篇)


物事を始める時には、
心を落ち着けて。
怒りや悲しみなどの
一時の感情で
決めちゃだめだよ。

時間は巻き戻せない

怒ると、頭にカーっと血が上って、つい人に当たったり、物に当たったりしちゃう、っていう人はいないかな。あとから「あんなこと、言うつもりじゃなかったのに」「あんなこと、するつもりじゃなかったのに」なんてくやんでも、時間を巻きもどすことはできないね。

怒るべき時に怒るのは、決して悪いことではないよ。でも、高ぶった感情のまま行動を起こすと、問題をひどくしてしまうよね。ほかにも「悲しい」「くやしい」などの気持ちでいっぱいな時には、人は、まちがった行動をしてしまいがちだよ。

そんな時は、感情のまま行動をするのをやめ、いったん頭を冷やそう。あとから「あー、どうしよう」って、思うことが減るはずだよ。

イラスト=『チコちゃんと学ぶ チコっと孫子』(河出書房新社)より
イラスト=『チコちゃんと学ぶ チコっと孫子』(河出書房新社)より

いつもの方法でうまくいかなくなったら…

正を以てがっし、
奇を以て勝つ。
(勢篇)


いつものやり方で、
どうしても
うまくいかないなら、
ふだんとちがう方向から
見て考えてみよう。

行き詰まった時ほど落ち着いて

孫子先生のこの言葉は、頭をやわらかくして、物事をいろいろな方向から考えることの大切さを教えてくれるよ。

湯浅邦弘監修『チコちゃんと学ぶ チコっと孫子』(河出書房新社)
湯浅邦弘監修『チコちゃんと学ぶ チコっと孫子』(河出書房新社)

たとえば問題にぶつかった時、なんとかしようとがんばるものの、それがうまくいかないと、たちまち不安になって、うろたえてしまうことってないかな。そのうち、気持ちによゆうがなくなって、「ああ、どうしよう、もうだめだ」としか、考えられなくなってしまう。

つらいと目の前しか見えなくなりがちだ。でも、問題の解決の方法は一つだけではないよ。ある方法がうまくいかないなら、気持ちを切りかえて、ほかの方法を探そう。行きづまった時ほど、落ち着いて物事を考え、多くの解決方法を見つけられるようになりたいね。

イラスト=『チコちゃんと学ぶ チコっと孫子』(河出書房新社)より
イラスト=『チコちゃんと学ぶ チコっと孫子』(河出書房新社)より
湯浅 邦弘(ゆあさ・くにひろ)
大阪大学大学院教授

1957年島根県出雲市生まれ。大阪大学大学院教授。専攻は中国古代思想史。博士(文学)。著書は、『孫子・三十六計』『孫子の兵法』『菜根譚』『貞観政要』(いずれも角川ソフィア文庫)など多数。