※本稿は、湯浅邦弘監修『チコちゃんと学ぶ チコっと孫子』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。
「一日をむだにしちゃった」に効く孫子の教え
朝の気は鋭く、
昼の気は惰り、
暮の気は帰す。
(軍争篇)
「やるぞ」っていう
気合いは朝はするどく、
昼はゆるみ、
夜にはしぼむよ。
朝、がんばろう!
休みの前日に布団の中で考えること
時間があったら、「やりたいな。がんばりたいな」と思っていること、君にも、いろいろあるんじゃないかな。休みの前の日には、「明日は、あれをしよう!」とか、「明日はこんな日にしよう!」って、考えてから寝るといいね。そして、翌朝はねぼうなんかせずに、わくわくした気分で起きよう。
早起きをすれば、その分、自分の時間が増えるよね。そのうえ、朝は、一日の中でも、集中して何かに取り組むのに、一番いい時間だよ。
窓を開けて深呼吸をしたら、朝の時間を、「やりたい。やらなくちゃ」と思っていたことに使おう。きっと、夜、寝る時に、「いい一日だったな」と思える、豊かな休日が過ごせるよ。
「目標を立ててもうまくいかない」に効く孫子の教え
兵法は、一に曰く度、
二に曰く量、三に曰く数、
四に曰く称、五に曰く勝。
(形篇)
物事を考える時、
ものさしで
はかるみたいに
きっちり考えよう。
算数はやっぱり大事!
目標に数字を入れてみる
毎日の生活に、「数」を取り入れよう。たとえば「算数の成績を上げたいなぁ」と思った時、ただ「勉強をがんばろう!」と気合いを入れるのではなく、「毎日、計算問題を5問、解こう」とか、「おふろの前に教科書を2ページ分、読もう」というふうに、「数」を入れた計画を立てるんだ。計算問題がすぐに解けるようなら問題数を増やしたり、逆に時間がかかりすぎるなら減らしたり、計画を簡単に見直すことができるのも、「数」のいいところだね。
毎朝、学校におくれそうになるのなら、起きるのを10分早くしてみる。そのために今より15分、早く寝る。そんなふうに、「数」を取り入れると、今するべきことがはっきりして、よい結果も出やすいよ!
「苦手な子と同じチームになった」という悩みに効く孫子の教え
呉人と越人と相悪むや、
其の舟を同じくして済りて
風に遇うに当たりては、
其の相救うや、左右の手の如し。
(九地篇)
仲が悪いと思っていても、
同じチームで同じ体験を
することで、
最強の仲間になれる。
いやだなぁという気持ちは顔に出る
学校生活の中では、「あの子、苦手だな」と思っている子と、となりの席になったり、同じ班になったりすることってあるよね。
「あー、いやだなぁ」と思っていたら、その気持ちは、顔にも態度にも出て、相手に伝わってしまう。これでは、せっかくの学校生活がつまらないものになってしまうよね。
いやだなと思っていても、「となりの席」「同じ班」であることは変わらない。それなら、苦手だ、という思いを捨て、ふたりでする作業を思い切り楽しむつもりで取り組んでみよう。先生からの課題には知恵を出し、協力し合おう。席替えになり、班が変わるころには、はなれるのがおしいくらい、よい友だちになっているかもしれないよ。
「もうがんばれない」に効く孫子の教え
少なければ則ち能く之を逃れ、
若かざれば則ち能く之を避く。
(謀攻篇)
「だめだな」と思ったら、
にげてもいい。
にげ出すことにも、
価値があるんだ。
戦いをやめるのは戦いを始めるより難しい
戦いをやめるのは、戦いを始めるより難しいと言われているよ。とくに負け戦はやめるのが難しい。やめると、負けは決定し、自分の力が足りなかったこと、自分の判断がまちがっていたことが明らかになるからだ。誰だって自分の弱さや、まちがいを認めるのはいやだよね。
でも、負ける戦いをズルズル続ければ、状況が悪くなるだけだ。体も心もクタクタになったら、がんばる気持ちさえ失ってしまうよね。
力が足りなかったのなら、力をたくわえ直して、もう一度挑戦すればいい。自分がまちがえていたなら、それを認めて、別の挑戦をすればいい。価値のある負けを受け入れたなら、それは、未来への大きな一歩につながっているんだよ。
計画通りにいかない時に効く孫子の教え
兵の形は水に象る。
水の行くは、高きを避けて
下に趨く。(虚実篇)
計画は大切だけど、
絶対ではないよ。
無理だと思ったら
変えてもいいんだ。
水のように、しなやかに、
流れにまかせてもいい。
計画にしばられてはいけない
夢をかなえるためには計画を立て、コツコツ努力をするといいよね。
でも、計画を立てたからって、その計画にしばられてはいけないよ。たとえば、最初に計画を立てる時は、ついやる気満々、無理な計画を考えがちだ。そして、実際に取り組んでみて、続けるのが難しいと感じたり、たった一回、計画通りにできなかったりしただけで、「もうだめだ」と、計画そのものを投げ出したくなってしまう。これでは、いつまでたってもスタート地点から進むことができないね。
計画は目的をなしとげるための手段だよ。決めたことだからって、意地になったりせず、自分に合うように何度でも見直そう。それでこそ努力は長続きし、少しずつ夢に近づいていくことができるんだ。
SNSで知らない人から「会いたい」と言われたら
辞卑くして備えを益す者は、進むなり。
辞強くして進駆する者は、退くなり。
(行軍篇)
あまい言葉や
強がった態度には、
うそが入っていることも。
真実を見つける心を
育てよう。
ライバルからほめられた時は注意が必要
人の言葉や態度は、必ずしも、その人の本当の考えを表しているとは限らないよ。君だって、悲しい時に「平気だよ」って強がったり、得意な気持ちでいっぱいな時に「たいしたことないよ」って顔をしたりすることって、あるよね。
勝負をしている者どうしなら、なおさらだ。自信がない時に自信満々なふりをしたり、逆に自信がある時に気弱そうにふるまったり、本心をかくすのも、勝つための作戦の一つなんだ。だから、勝負をしている相手から必要以上にほめちぎられ、君の得になるようなことを教えられた時は注意が必要だよ。相手の心からの言葉なのか、作戦なのか見極めよう。油断をして、足をすくわれないようにしたいね。
ついカーっとなってしまう時に効く孫子の教え
主は怒りを以て師を興すべからず、
将は慍みを以て戦いを致すべからず。
(火攻篇)
物事を始める時には、
心を落ち着けて。
怒りや悲しみなどの
一時の感情で
決めちゃだめだよ。
時間は巻き戻せない
怒ると、頭にカーっと血が上って、つい人に当たったり、物に当たったりしちゃう、っていう人はいないかな。あとから「あんなこと、言うつもりじゃなかったのに」「あんなこと、するつもりじゃなかったのに」なんてくやんでも、時間を巻きもどすことはできないね。
怒るべき時に怒るのは、決して悪いことではないよ。でも、高ぶった感情のまま行動を起こすと、問題をひどくしてしまうよね。ほかにも「悲しい」「くやしい」などの気持ちでいっぱいな時には、人は、まちがった行動をしてしまいがちだよ。
そんな時は、感情のまま行動をするのをやめ、いったん頭を冷やそう。あとから「あー、どうしよう」って、思うことが減るはずだよ。
いつもの方法でうまくいかなくなったら…
正を以て合し、
奇を以て勝つ。
(勢篇)
いつものやり方で、
どうしても
うまくいかないなら、
ふだんとちがう方向から
見て考えてみよう。
行き詰まった時ほど落ち着いて
孫子先生のこの言葉は、頭をやわらかくして、物事をいろいろな方向から考えることの大切さを教えてくれるよ。
たとえば問題にぶつかった時、なんとかしようとがんばるものの、それがうまくいかないと、たちまち不安になって、うろたえてしまうことってないかな。そのうち、気持ちによゆうがなくなって、「ああ、どうしよう、もうだめだ」としか、考えられなくなってしまう。
つらいと目の前しか見えなくなりがちだ。でも、問題の解決の方法は一つだけではないよ。ある方法がうまくいかないなら、気持ちを切りかえて、ほかの方法を探そう。行きづまった時ほど、落ち着いて物事を考え、多くの解決方法を見つけられるようになりたいね。