全世界株式の「インデックス」にもいろいろある

全世界株式のインデックスファンドといっても、よく見ると各社異なるところがあるのです。

日本を含む全世界株価指数には、「FTSE Global All Cap Index(以下、FTSE)」と「MSCI ACWI(以下、MSCI)」があります。図表2には代表的なファンドの例も入れておきました。

【図表】全世界株式インデックスの分類
図表=Money&You作成

投資家に人気が高いのが、次の4本です。「世界株式ファンド四天王」と言われることもあります。

SBI・全世界株式インデックス・ファンド
SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド
楽天・全世界株式インデックス・ファンド
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)

ここで気になるのが、FTSEとMSCI、どちらのベンチマークを選ぶのが良いのか、です。

【図表】FTSEとMSCIの比較(2022年9月末時点の情報に基づく)
図表=Money&You作成

どちらの指標も、ポートフォリオを構成する国の比率は似ていて、日本・米国の組入割合も大差ありません。しかし、FTSEは小型株を含んでいて、銘柄数が多くなっています。またFTSEはMSCIよりも世界株式市場のカバー率が高いのも特徴です。

もっとも、2つの指数の値動きには、それほど大きな差はありません。ですから気軽に選んでも問題ないのですが、個人的には小型株を含み、カバー率が高い「FTSE」が好みです。

世界株式ファンド四天王、どれがいい?

以上を踏まえて、世界株式ファンド四天王のうち、どれを選ぶのがいいのでしょうか。

【図表】世界株式ファンド四天王の比較(2022年10月18日時点の情報に基づく)
図表=Money&You作成
(※1)トラッキングエラー:ベンチマークへの連動性を見るもの。数値が低いほど良い

信託報酬を見ると「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」がもっとも安くなっています。純資産総額・年率リターン・シャープレシオ(※2)・販売会社数の面では、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」に軍配が上がります。

(※2)シャープレシオ:リスクに見合った利益を得られているかを数値化したもの。数値が高いほど、同程度のリスクに対してより高いリターンを得ていると考えられる

なお、SBI・V・全世界株式インデックス・ファンドは2022年に新設されたファンドなので、リターンなどの表記はありませんが、SBI・全世界株式インデックス・ファンドや楽天・全世界株式インデックス・ファンドと近い数字になっていたと考えられます。

ところで、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)には「受益者還元型信託報酬」という仕組みがあります。受益者還元型信託報酬は、ファンドの純資産総額が増えるごとに信託報酬が少しずつ下がっていく仕組みです。

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は販売会社が多いうえ、個人投資家にも人気があります。「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year」でも2019年から2021年まで3年連続で1位になったほどです。今後も、低コスト化が進みそうです。

以上より、世界株式ファンド四天王はどれを選んでも値動きには大差ありませんが、コスト面で言えば「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」「SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド」「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の3本になりそうです。

「販売会社数の多さ=投資のしやすさ」と考えれば、「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」という選択もあるでしょう。

筆者は仕事柄、4本全てに投資をしているのですが、絞るならば、「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」または「SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド」のどちらかと、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の2本かなといった具合です。

今回取り上げた4本は、どれも人気のあるファンドですが、投資先のファンドをより絞りたいという場合には、ぜひ参考になさってください。

頼藤 太希(よりふじ・たいき)
マネーコンサルタント

株式会社Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年にMoney&Youを創業し、現職へ。女性向けWebメディア『Mocha(モカ)』、YouTubeチャンネル『Money&YouTV』、Podcast『マネラジ。』、書籍、講演などを通して日本人のマネーリテラシー向上に注力している。『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)など書籍90冊、著書累計150万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。