今後、旧統一教会に解散命令が出される可能性はあるのか。ジャーナリストの鈴木エイト氏は「解散命令までいく可能性もなくはない。ただ、宗教法人法などのハードルもかなり高いので、実際に出るかどうかは微妙」だという。旧統一教会問題の落としどころについて、ひろゆき氏との対談をお届けしよう――。(第5回)

※本記事の情報は対談を収録した2022年9月9日時点のものです。

爆笑問題・太田氏の炎上問題

【エイト】一連の旧統一教会問題の報道の中で、爆笑問題の太田光さんが教団を擁護するような発言をしているんじゃないかと、炎上していましたよね。

でも太田さんは、現役の信者の人権などを考えて発言しているのだと思うので、僕はそういう印象を受けませんでした。

【ひろゆき】中立の立場を取ろうとしているだけで。

【エイト】たしかに、現役の信者たちは教団からコントロールされて、いろいろやっている面もあるので、全面的に擁護するのは難しいです。ただ、2世信者を含めて教団の中にとどまることを是としている人にとって、今の状況は過酷できついだろうなと思います。

【ひろゆき】今回の問題で中立な立場で発言している人と、統一教会を擁護している人がグラデーションで、わかりづらいんですよね。日本会議のような日本の昔の価値観が大好きなガチ保守の人と統一教会の人が言っていることが、結構かぶっていますからね。

【エイト】そうなんです。「文藝春秋」10月号に書いたのですが、2000年代初めに小泉政権が男女共同参画を積極的に進めたバックラッシュ(反動)で、男女共同参画や反ジェンダーの動きを旧統一教会がかなり後押ししていたんです。日本会議などとも連動して。そこに安倍(晋三)元首相や、自民党の人たちがかなり共鳴して一緒に動いていたんです。そのあたりの連動性はどうしてもあるので。

東西冷戦が終わって反共産主義があまり意味を持たなくなったときに、旧統一教会側は反ジェンダーなども文化共産主義だとひっくるめて批判をして、反共の同志としてつながっていた政治家とまた変な形でくっついたというのが、この20年の流れです。

その果てに、安倍元首相は殺されてしまった。いろいろな意味で、皮肉な流れがあるんですよね。

撮影=松永学(右)
ジャーナリストの鈴木エイト氏(左)とひろゆき氏(右)

ガチ保守が旧統一教会に憤らない気持ち悪さ

【ひろゆき】日本会議などのガチ保守の人から見たら、韓国に毎年お金を送り続けていて、そのお金が北朝鮮に流れていたり、天皇陛下役が文鮮明氏にひざまずく儀式をやっていたりと、旧統一教会は明らかに反発すべき相手ですよね。

【エイト】そうなんですよ。真正保守の人は許せない部分はあるはずなんです。

【ひろゆき】一水会はそういうことを言っていますが、ほかの保守系の人はなぜか静観モードですよね。

【エイト】歴史的に右派学生運動の頃から連動はしていて、旧統一教会関連のイベントに他の宗教右派系と呼ばれる人たちが参加していたりするんです。そうした関係性や人的交流があるから批判しづらいのかもしれません。

80年代には、世界日報の元編集局長・副島嘉和氏が月刊「文芸春秋」84年7月号に、昭和天皇に扮した日本人幹部が文鮮明教祖にひざまづく天皇拝跪の儀式があると書いたんです。それで、そんな秘密儀式があるのかと、当時の右翼から総スカンを食っているんです。

今もそれと同じような状況になってもおかしくないのですが、旧統一教会系のイベントに安倍政権の人が出ていたとなると、ネトウヨたちも黙り込んでしまう。ここ10年くらいそんな感じでした。

本当の保守の人なら黙っていられないような状況なのに、なぜかそこを流してしまうという、変な気持ち悪さがあるんですよね。