「気長に」「何度も」「あきらめず」探す

「好きなこと」は人それぞれ異なります。そして、子どもの好きなことを探すのは、なおさら時間がかかるもの。意識的に探さなければ見つかりにくいものです。ですから、「これ!」と思える習いごとになかなか出合えなくても、あきらめないこと。いつか必ず見つかると信じて、気長に探しましょう。

わが家も、娘がバレエに落ち着くまでには、15を超えるお稽古ごとを試しました。ピアノ、器械体操、陶芸、水泳、スケート、テニス、ミュージカル、スキー、サッカー、バスケットボール……。選ぶのは確かに子ども本人ですが、機会を与え、気長に見守るのが親にできるサポートだと思います。

「これだ!」と思える習いごとは、子どもの取り組む姿に「フロー」または「笑顔」があるかどうかでわかります。

周りの音が聞こえないほど集中した「フロー状態」になれるものこそ、最高の学びにつながったり、生きる意欲をアップさせたり、非認知能力を伸ばしたりします。わが子が新しい習いごとにチャレンジしているときは「フロー状態に入っているかどうか」観察し、そんな機会を増やしてあげましょう。

また子どもの「笑顔」も好きのバロメーター。どんなときに自然と笑顔になっているかも観察しましょう。

習いごとは「小さく始める」「やめ方のルールを決めておく」

何事もやってみなくてはわかりません。ある習いごとを、「面白そう」と思って始めたものの、実際にやってみたら全然向いていなかったとか、熱中できなかった、ということはよくあることです。「絶対に、これで将来生計を立てるくらいになるぞ!」「用具を一式全部そろえる!」などと、始める前から大きな責任を背負わないことが大切。

つまり、「小さく」始めることが鉄則です。「1カ月」「3カ月」「半年」など、それぞれの習いごとにふさわしい期限を設けて、「ここまでは続ける」と小さな目標を立てながら取り組みます。

そして「もう少しやってみたいな」という最小単位を繰り返していく。その積み重ねで、気がつけば「面白そう」が「好き」に、「好き」が「大好き」になっていきます。このプロセスを経ると、その習いごとが自分にとって意味があるものと思えるようになります。

また、決めておくとよいのが、「やめ方」のルールです。たとえば、「やめたいと思ってもすぐにはやめない。あと2回頑張ってみる」「ここまでやったらやめる」など、子どもと一緒に決めた「やめ方のルール」を徹底します。

ボーク重子『しなさいと言わない子育て』(サンマーク出版)
ボーク重子『しなさいと言わない子育て』(サンマーク出版)

習いごとは、お金のかかるものです。私たちはお金と時間をかければかけるほど途中でやめられなくなります。「これだけ投資したのだからもったいない」という心理ですよね。やめずに続けることを「粘り強い」「途中で投げ出さない」と評価するのもありかもしれませんが、非認知能力をはぐくむ観点からすると、さほど意味があるとは言えません。

嫌いなこと、気が乗らないこと、自分にとって意味を見出せないこと、なんとなくみんながやっているから続けてきたことで、人生を切り開くことはできませんよね。

子どもの非認知能力が最も効果的に伸びるのは、「好き」なことに自らの意思で取り組むとき。だから、向いていないと思ったら、方向転換することをためらう必要はありません。でも、何でもかんでも「すぐやめる」のではなく、その判断基準を親子で共有していることが大切です。

わが家では、新しい習いごとを始めるとき「同時期にやる習いごとは2つまで」ということとあわせて、「次にやりたいことがもし出てきても、すぐには飛びつかない」ということもルールにしてきました。詰め込んでしまっては、結局こなすことに精一杯で楽しむことができませんものね。

ボーク 重子(ぼーく・しげこ)
ライフコーチ

Shigeko Bork BYBS Coaching LLC代表。ICF(国際コーチング連盟)会員ライフコーチ。アートコンサルタント。福島県生まれ。30歳目前に単独渡英し、美術系の大学院サザビーズ・インスティテュート・オブ・アートに入学、現代美術史の修士号を取得する。非認知能力育児の研究・調査・実践を重ね、自身の育児に活用。娘・スカイが18歳のときに「全米最優秀女子高生The Distinguished Young Woman of America」に選ばれる。著書に『世界最高の子育て』(ダイヤモンド社)、『「非認知能力」の育て方』(小学館)など多数。