宿題もドリルもない小学校で提案されたたったひとつのこと

娘が通った私立の小学校は、3年生が終わるまで教科書も宿題もありませんでした。正直言って私はちょっと慌てていました。だって九九もドリルもないんですもの。そこで先生に「何か宿題を出してください」とお願いしたのです。

そこで先生が提案したのが「毎日30分の空想タイム」という宿題でした。

「空想なんて!」と思いますよね? 私も先生に言われたときは「空想ですって? それでいいの?」と思いましたから。半信半疑のまま、私は先生からの提案のとおり、毎日30分間の空想時間を日課にしたのです。

小学校6年生くらいまでこの習慣は続きましたが、空想時間に絵を描くこともあれば、浴衣などの小道具や音楽プレーヤーを持ち込んで踊ったり、お話をつくったり、何もせずボーッと過ごしていることもあったようです。

このときに私が学んだのは、「○○したい」「○○しよう」という主体性は、親主導で決めギッチリ詰め込まれた余裕のないスケジュールからは生まれにくいということ。「自分は何をしたいのか」「どこを目指すのか」「何のためにそれをするのか」を考えるには、そのための心の自由と時間の余裕が必要だということです。

「空想タイム」はそのひとつの方法というわけですが、その自由と、そこで生まれた余白の時間で、娘はいろいろなことをボーッと考えたり、想像したり、自分と向き合ったりしたようです。

楽譜を広げている少女が見つめているのはイメージした音楽
写真=iStock.com/PeopleImages
※写真はイメージです

空想がもたらす3つのいいこと

ボーッとあれこれ思考のおもむくままに、空想する30分間。この「空想タイム」には、3つの利点があります。

1つめは、空想をすると、自由な発想を身近なものにするということ。自分の頭のなかで、常識の枠を取り払って自由に考える時間は、「やりたいこと」「こうなりたい」など、制限をかけず、心をのびのびと解放することにつながります。想像力と好奇心が高まるのです。

2つめは、ゼロから1へと、子どもの行動が始まる「場」になる、ということ。空想しながら、「これって何だろう」「どうしてこうなるのだろう」「こんなふうにしたらどうだろう」「面白そう」「やってみたい」など興味を持ったとき、その場で行動へ移すことができます。

何か他のことに遮られずに、行動へ移すことができる時間となります。大人に言われてやるのではなく、自分が思ったことを、言われなくても行動に移す。好奇心と主体性をはぐくむ習慣になります。

3つめは、子どもをポジティブにするということ。強制されることなく、自由に空想をするとき、人はおのずと好きなこと、楽しいことを考えます。そんな時間は、心を楽観的でポジティブにしてくれます。ポジティブな心は、失敗を恐れずに行動しやすくしてくれます。またうまくいかないときも次につなげるための回復力ややり抜く力をはぐくんでくれます。

「空想する時間」は好奇心や想像力・主体性を育てる貴重な「ルーティン」。子どもにとって何より大切な「余白の時間」をきちんとつくってあげたいものです。