ちなみに、イヌ候補はこう考えました。
「3回連続で『表』が出るのはとても珍しい。ということは、決戦では『裏』を選ぶほうが確率的に高いはず」
このような考えを「ギャンブラーの誤謬」と呼んでいます。イヌ候補の考えは完全に「思い込み」なのです。確率は直観とはズレることが多いのが大きな特徴で、それが確率の理解をむずかしくしています。
確率の最も大事な点は、それまでのコイン投げに左右されず、コインの表・裏のどちらが出るかは『1回ごとに独立している』という点にあります。だから、「3回連続して『表』が出たから、次はそろそろ『裏』が出るのでは……」という考えは「淡い期待」にすぎないのです。
「確立の高い方」は選ぶことができる
すると、答えは「どちらに賭けても運しだいだから、不明」ということでしょうか。いえ、違います。少しでも確率の高いほうに賭けるべきです。
表、または裏の出方が同様に確からしいコインを投げたとき、表、または裏が出る確率はそれぞれ「2分の1」ずつと説明されます。これを「数学的確率」と呼んでいます。
しかし、現実のコインで完璧に表・裏が同じ確率で出るようなコインはない、と考えてよいでしょう。だから投げてみないとわからないのです。そのとき、出てくる確率を「統計的確率」と呼びます。数学的確率はあくまでも論理的に考えた確率で、「出方が同様に確からしい」といった表現を伴います。
一方のネコ候補はこう考えました。
「3回続けて『表』が出るなんて。何らかの理由で表が出やすいんじゃ……?」
今回の場合、市会議員のたった1つの席を競っていること、統計的確率に従うコインであることを考えると、ネコ候補の考えたとおりこれまでの「実績」で考えるのが得策。
つまり、答えは……「①またもや表が出る可能性が高い」が正解です。
子どもの頃、下駄を飛ばして表が出たら「明日は晴れ」という遊びがありましたよね。他にも、ペットボトルのフタを投げて上向き・下向きの回数を測るなんてこともあります。
さらに、画びょうを投げて、上を向く回数を測るなど、「投げてみないとわからない」場合、この統計的確率の方法がとられます。