女子高生がエンジニアをめざせば、日本の未来は明るい

Ameliasでは起業プログラムと同時に、若年層に向けたシステム開発やプログラミングのエンジニアをめざすためのプログラムも実施予定。今後ビジネスを構築する際にテクノロジーは必須だが、日本では女性エンジニアが男性に比べて圧倒的に数が少ないという事情がある。そして男性が力を持つ分野において、女性がセクシャルハラスメントを受けるシーンがいまだに存在する。

アメリカでも女性が起業する際、男性エンジニアに仕事を依頼することが多い。当初は「資金が足りないなら無報酬でもいい」と快く引き受けてくれても、プロジェクトが進むにつれ、労働の見返りとして男女の関係を求められることもあるよう。それを拒否すると男性が仕事を途中で投げ出し、ビジネスそのものがゼロに帰することも少なくないのだという。

「私にもそんな経験がありました。当時は自分に人を見る目がないのかと反省しましたが、WSLabを始めたときに、同じ経験をした女性が多くて驚きました。こんなイヤな思いをすることなくビジネスを進めるためにも、女性エンジニアを育て、共に歩む起業仲間を増やすことはマストだと思っています」

ため息をつきたくなるような現実が女性たちの前に依然として横たわっているが、決して諦めないことが大切さだと堀江さんは言う。

「ママはいつも楽しそう」と子どもが思うことの幸せ

繰り返しになるが、ビジネスにはテクノロジーは不可欠だ。

「起業というと、ものすごい仕掛けがあったり、たくさんの投資家が必要だったりなどのイメージがありますが、スモールビジネスでも十分。今ならオンライン上で最新テクノロジーを使って、ゼロ投資でスタートすることができます。『外国の子どもに折り紙を教えたい』みたいなレベルでいい。でもそこには自らのワクワク感を大切にして、新しいことにチャレンジしたい! という強い気持ちが必要です」

米国のマテル社が製作した、堀江さんをモデルとしたバービー人形。
撮影=田子芙蓉
米国のマテル社が製作した、堀江さんをモデルとしたバービー人形。
SXSW(サウスバイサウスウェスト/アメリカで開催される音楽・映画・インタラクティブの見本市)で、グローバルスピーカーとしてスピーチする堀江さん。バービー人形の衣装は、これを参考につくってもらった。
写真提供=WSLab
SXSW V2V(アメリカで開催される起業家向けのスタートアップコンテスト、パネルディスカッション、メンタリングワークショップのイベント)で、グローバルスピーカーとしてスピーチする堀江さん。バービー人形の衣装は、これを参考につくってもらった。

離婚を経験し、現在2人の息子をシングルマザーとして養育する堀江さんもまた、母子家庭で育った。人生の重大な局面でいつも自分に指針を与えてくれたのは、母だったと振り返る。そして自分もそうありたいと願う。

「『ママはいつも仕事が大変そうだったけど、でもなんだか楽しそうだった』と息子たちが振り返ってくれたら。『つらいこともあるけれど、それでも生きることは楽しい』のだと、私の背中を見て感じてくれたらそれだけで幸せなのです」

構成=東野りか

堀江 愛利(ほりえ・あり)
Women’s Startup Lab Impact Foundation Japan 代表

高校3年時、米国カリフォルニア州の高校に留学。カリフォルニア州立大学に入学し、卒業後IBMに入社。2013年Women’s Startup Lab を立ち上げ、2022年にWomen’s Startup Lab Impact Foundation Japan の活動をスタート。同年3月、米国マテル社が製造するバービー人形のロールモデルシリーズ(境界を突破し、次世代に希望を与える女性)に、日本人起業家として初めて選ばれた。