不登校児がたどる3つの段階

不登校の時期を3つに分けている人がいます。第一期は心気症の時期。学校へ行こうとすると頭が痛くなったりお腹が痛くなったりします。この時期に早く治療するとよいそうですが、時期を逸してしまう場合も多いでしょう。第二期は攻撃的な時期。暴力をふるいます。第三期は自閉的になる時期。半年くらいすると、自分から学校へ行くといい出すといいますが、そううまくいく場合ばかりでもなく、長い間家族が悩み苦しみます。

根底には欲求不満があり、性格の強い子は不登校という手段をとり、弱い子は拒食症(摂食障がい)という手段をとって自分をいじめるのだと、慶應病院小児科の渡辺久子先生(当時)は、いっていました。社会の荒波から帰った子供は家庭という港でゆっくり休ませるべきなのに、勉強だ、塾だと追いたてて、家庭が憩いの場になっていないと歪みがたまってくるのは当然ともいえます。たとえ勉強が忙しくても家庭の雰囲気がなごやかなら、子供は乗り越えることもできるでしょう。

不登校から引きこもりになる場合もあり、2021年に日本では引きこもりが100万人を超え、社会問題としてとらえる動きが出てきました。

不登校の中には、精神障がい型、つまり統合失調症の初期も時々紛れ込んでいます。その場合は早く治療を受けるほど治りやすいですから、親はかかえ込まずに誰かに相談してほしいと思います。

菅沼 安嬉子(すがぬま・あきこ)
内科医

1943年、東京生まれ。68年、慶應義塾大学医学部卒業、内科学教室入室。2020年3月、女性で初めて慶應連合三田会会長に就任。菅沼三田診療所副院長。慶應義塾評議員他、多数務める。1985~2000年までの15年間、医師として診療を行うかたわら、慶應義塾女子高等学校で保健授業の講師を務めた。