※本稿は、菅沼安嬉子『私が教えた 慶應女子高の保健授業 家庭で使える大人の教養医学』(世界文化社)の一部を再編集したものです。
便はトコロテンのようには出てこない
だいたいの人は朝1回排便します。数日に1回でも規則的に出ていると便秘とはいいませんが、大腸内に内容物が停滞して糞便の水分量が低下すると便秘とみなされます。
消化管は口から肛門まで続いているので、食べ物を食べるとトコロテンのように便が押し出されてくると一般の人は考えがちですが、そうではありません。
排便は胃結腸反射で始まる
胃の中に食物が入るとその刺激で大腸が動き出し、大腸壁の筋肉が順に動いて、内容物を下行結腸の方へ運びます。大腸のことを結腸ともいうので、この一連の動きを胃結腸反射といっています。
直腸に便が溜まると、脳に信号が行って、初めてトイレへ行きたいと感じるのです。そして、トイレでいきむと便が出るというしくみです。
胃結腸反射は胃の中が空っぽの時間が長いほど、そして胃の中にずっしりと食物が入るほど強くなります。なんといっても夜中が何も食べない時間が一番長いので、朝ごはんを食べた後、排便する人が多いのです。
では昼まで食べなければもっと強くなるかというと、そうでもありません。体の中には交感神経と副交感神経があり、交感神経は腸の動きを止め、副交感神経は腸の動きを活発にしています。一歩家から外に出ると交感神経が緊張してしまうので、後でしようと思っても、うまく出なくなってしまいます。