大腸には毎日約10リットルの水がやってくる
下痢は便秘とは逆に、1回の便の中の水分量が200mL以上とされています。しかし、いちいち水分など測ってはいられません。水状または、泥状の便を下痢といいます。
大腸には、便とともに唾液・胃液・すい液・腸液と摂取した水分が合わさって1日に約1万mL(10L)の水がやってきます。そのうち9900mL(9.9L)を吸収するのは大腸の左半分です。早く便が通過して水分吸収が間に合わなかったり、何らかの原因で粘膜がただれて、水分吸収が悪くなると下痢になります。
一生に一度も下痢をしたことのない人は稀なくらいポピュラーなものですが、とても嫌なものでもあります。あまり激しい下痢の時は気分が悪くなって倒れてしまうこともあります。
下痢には急性と慢性があり、急性は1日から数週間でじきに治るもの、慢性は1カ月以上、数年から一生続くほど長引くもの、と分けています。
「急性の下痢」――炎症によるものと機能性のものがある
炎症によるもの ①ウイルス性
腸管ウイルスによるものは、一般にかぜがお腹に入ったといわれ、かぜ症状を伴い熱が出たりします。でも軽症が多いので、食べ物に気をつけていれば治ります。
大人はかなり脱水に耐えるので、おかゆやうどん等の消化のよいものを食べ、温かいお茶やスポーツ飲料を飲んでいるくらいでよいのですが、子供はすぐ脱水になりますから、皮膚をつまんでみて、たるむようだと危険な状態です。急いで点滴をしてもらわなくてはなりません。
乳児の体は80%以上が水分なので、脱水にとても弱いのです。小児は70%、大人になると65%くらい、高齢になると50%くらいになり、しわが増えてきます。
生ガキを食べた時、ノロウイルスによる食中毒で下痢をするのも、このウイルス性下痢です。
炎症によるもの ②細菌性
赤痢、コレラ、食中毒がこれにあたります。赤痢は赤痢菌、コレラはコレラ菌による伝染病ですので、入院隔離の上、抗生剤や点滴でしっかり治療する必要があります。昔は死んだ人もたくさんいた病気でした。日本の衛生状態がよくなってからはみかけなくなりましたが、東南アジアやインドではまだ多いので、旅行の時は生水や生物を飲食しないように充分注意して下さい。
食中毒は、気温の高い時期に食物の中に食中毒菌が増えて、それを食べて発病します。たくさん死者が出たO157(病原性大腸菌)は、注意していてもまだ時々発生しています。体力が落ちると重症になるので、若くても自分の体に過信は禁物です。とくに夏場は睡眠不足、過労にならないように注意しましょう。
機能性下痢――緊張や冷たい飲み物で下痢に
これには「神経性下痢」と「反射性下痢」があります。
神経性は、テストや試合、ストレスなど、精神的に緊張することからくる場合で、反射性は、冷たい物を飲んだり食べたりした後、急にお腹が痛くなるような場合です。スーパーの冷凍ケースを開けただけでなる人もいて、個人差があります。