世界が注目した「iモード革命」を起こしたひとり
「iモード革命」と呼ばれた快挙が世界で注目されたのは、1999年2月。インターネットへの接続を可能にした世界初の携帯電話サービスを事業化したのがNTTドコモの「iモード」である。米国アップルがスマートフォンを初めて発売したのは2007年、その8年前に「スマホの原型」ともいえるデータ通信サービスが日本で誕生した。
「iモード」を成功に導いたのは、NTTドコモの榎啓一氏の下、リクルートからスカウトされた松永真理さん、ベンチャー企業の副社長から転じた夏野剛氏をはじめとする多才な人材が集うチームだった。そして、その立ち上げメンバーの一員として、笹原優子さんも開発に携わっていた。
「多様性あるメンバーが同じ方向を向いて力を合わせることで、新しい文化が創り出されていく。まさに世界を変えるような現場に立ち合えたことが、私の原体験になっています」
「これから最高のエンタメになる」と確信
エンジニアとしてNTTドコモヘ入社したのは1995年。就活の頃はポケベルが主流で、携帯電話はまだ普及していない時代だった。もともとゲームが好きでエンターテインメント業界を考えていたが、「携帯電話があれば、いつでもどこでも会話ができる。これから最高のエンタメになるだろう」と。それが志望の動機になったという。
入社4年目には「iモード」の開発チームに加わり、対応端末のラインナップ企画やサービス仕様の策定に携わる。コミュニケーションを円滑にする仕掛けとして、今ではすっかり一般的になった“絵文字”も、このときのチームで生み出した。試行段階では、高速移動などのいかなる状況でもちゃんとメールが届くかどうかを確認するため、入念な試験を繰り返したという。
「新幹線を何度か往復したり、高速道路をぐるぐる走り回ったり。皆は酔ってつらそうでしたが、私は三半規管が丈夫みたいで降りた後に、すぐにラーメンを食べても平気で(笑)。山手線では人に見られないように、画板で端末を隠しながらテストしていました。今思うとちょっと怪しかったかもしれません……」