「ワークインライフ」がもたらすマネジメントへの影響

このワークライフバランスからワークインライフへの移行は、リモートマネジメントを考えるうえで、どのような影響があるのでしょうか。それは、生活空間に仕事が取り込まれることで、メンバーには仕事に集中できる環境を自分で整える責任が生まれたということです。

たとえば、インターネット環境やヘッドセットなど在宅勤務用のツールを整えたり、同時期に在宅勤務になったパートナーのオンラインミーティングと自分のオンラインミーティングの場所や時間を調整したりする必要がでました。また、通勤やオフィスに行くという物理的な変化がないため、オン/オフを自分で切り替える必要もあります。それがうまくいかないことで、働き過ぎたり、思ったより仕事が進まなかったりするメンバーも出ています。

一方で、リモートワークの進展で、家族と過ごす時間が増えたり、新たな趣味を始められたりと、生活が充実するメンバーもいます。このような日々を過ごすことで、仕事が、生活の様々な要素の1つに過ぎなかったと感じるメンバーも出てきたのです。マネジャーにとって、メンバーが仕事に注力する意識づけや環境整備は難しくなりました。「ワークライフバランスからワークインライフへの移行」によって、リモートでのマネジメントには、次の要素が加わったと言えます。

●生活の中で、仕事に集中できる環境をつくるという、メンバーの新たな負荷を理解すること
若い母親は彼女の子供と家の中の作業
写真=iStock.com/monzenmachi
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また、ワークインライフは、仕事とメンバーの関係性に新たな気づきをもたらしました。それは、仕事はメンバーの活動の一部であり、メンバーの持つ顔の一つに過ぎないということです。もちろんメンバーにとって、仕事の重要性が下がったというわけではないのですが、仕事と同じくらい大事な自分の顔があるということに気づいたメンバーが出ているということです。

よってこの「ライフを大事にする」は、新たに意識して行う必要が出てきた領域にあたるでしょう。ちなみに、この対象には、メンバーに加え、マネジャー自身も含まれます。