買い増しが無理なら「何もしない」が最良の策

積立投資というのはこのメカニズムの恩恵を長期にわたって取りに行くことであり、暴落したからといってそれをやめてしまうということでは、その恩恵を受けることができなくなってしまいます。なぜなら一定金額で購入を続けていくことによって、下落した局面では自動的に数量を多く買うことができるにもかかわらず、やめてしまうことでそのメリットを受けられなくなってしまうからです。したがって株式であれ、投資信託であれ、下がったところで買い増しをするというのが無理なら「何もしない」というのが最良の策になるといって良いでしょう。

ただし、「何もしないのが良い」と言いましたが、これは資産形成を目的として長期投資をしている人の話です。短期で売買して利ざやを稼ごうという人は情報を判断して機敏に動く、あるいは当面リスクオフになりそうなら、いったん全部売却して次の上昇トレンドを待つということもありかもしれません。ただ、これは非常に難しいことで、いくら考えても推理しても当たるかどうかは全くわかりません。

「ひらめき」と「勘」、そして「運」に頼るしかありませんから、それでもやろうという人はどうぞお好きになさってくださいということです。もちろん運良くうまく立ち回ることができれば大きな利益を得ることもできるでしょうが、失敗すると大きな損失が生じることにもなりかねませんので注意が必要です。やはりわれわれ普通の投資家にとっては「何もしない」というのが最善の策と言えるでしょう。

大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト

1952年大阪府生まれ。オフィス・リベルタス創業者。大手証券会社で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事。定年まで勤務し、2012年に独立後は、「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるように支援する」という理念のもと、資産運用やライフプランニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行った。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。著書に『投資賢者の心理学』(日経ビジネス人文庫)、『定年男子 定年女子』(共著・日経BP)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)、『お金の賢い減らし方』(光文社新書)など多数。2024年1月没。