心不全は一方通行。前のステージには戻れない

こうした状況を受けて、日本循環器学会と日本心不全学会は2017年「急性・慢性心不全診療ガイドライン」を改定しました。このガイドラインでは心不全をA~Dの4つのステージに分けているのでご紹介しましょう。

まず、着目してほしいのが、心不全を発症するのが「ステージC」からだということ。症状がない段階の「ステージA」と「ステージB」の人たちも心不全予備軍としてカテゴリされています。例えばステージAは、心不全症候や心疾患はないものの、高血圧、糖尿病、動脈硬化性疾患を有している人が該当します。高血圧の人は、ただ血圧が高いと捉えるのではなく、心不全のリスクを持っていると定義されています。

【図表2】心不全のステージ分類と予防チャンス
出典=原田睦生特任准教授の解説を基に編集部作成

ちなみに「ステージC」になると事態は一気に深刻になります。急性心不全が発症して、入院。回復したものの、再発して、慢性心不全となり、「ステージD」に進むと終末期ケアとなっていきます。ここで大切なのは、次のステージに進まないことです。心不全は一方通行で、前のステージに戻ることはできませんが、その場に留まることはできます。ステージAであれば、大きな検査も、手術も不要で、心不全を防ぐことができるのです。

具体的な予防法は以下のとおりです。

【食事】
特に気をつけたいのは、高血圧の原因にもなる塩分。日本人の平均摂取量は10gだが、6gに抑えるようにしたい。
積極的に摂取すべきは「フルーツ」「野菜」、「玄米」や「オートミール」などの全粒穀物、「魚」「低脂肪乳」「赤身肉」「鶏肉」などの良質なタンパク源と「植物性油脂」。
逆に砂糖の入った飲み物や食べ物、加工肉、スナック菓子やカップ麺などの加工食品、動物性油脂は減らそう。
アルコールはビールなら500cc1本、ワインなら200mlが1日の目安(女性はその半分が適量)だ。
【運動】
早足のウォーキング、自転車、動きのあるヨガ、水泳など中強度の運動を週に150分、またはジョギングやテニスなど高強度の運動を週に75分行うと、循環器病の死亡リスクは55%下がることがわかっている。
ただし、隠れ心臓病の人は、負荷の大きい運動は死亡リスクが高まるので、主治医と相談のうえ実行を。
【睡眠】
睡眠不足や睡眠障害はホルモンや自律神経のバランスをくずし、肥満や生活習慣病の原因に。質の良い睡眠をしっかりと取るようにしよう。
食事制限を表すイメージ
写真=iStock.com/BBuilder
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