定期昇給、手当を廃止し基本給を一本化

大手企業で最初に仕事基準の完全職務給を導入したのがキヤノンだった。2001年に管理職に導入し、05年に非管理職も含めて一本化した。社員の個々の仕事の職務分析・評価を実施し、職責・職務内容を定義した職務等級を設定し、賃金は等級ごとに決まる。仕事基準である以上、年功的な一律の定期昇給を廃止し、仕事と関係のない家族手当、住宅手当、皆勤手当などの属人手当も廃止し、基本給一本に統一した。

キヤノンに限らずジョブ型導入企業のほとんどが家族手当、住宅手当、皆勤手当などの属人手当を廃止し、基本給一本に統一している。人事担当者の中には「そもそも、業務の内容や成果と無関係に従業員に手当などの金銭が支払われていること自体がおかしい。今後、ジョブ型雇用の考え方が広まれば、扶養手当のような従業員の属性に対しての金銭支給はなくなっていくだろう」と言う人もいる。

結婚や子どもがいるかどうかは職務や成果に関係ない

2022年に管理職に続いて一般社員にもジョブ型人事制度の導入を予定している大手製造業の人事担当者もこう語る。

「担当する仕事の大きさで処遇を決めるというのが基本的考え方だ。その中で、本人が自己選択で得た属性によって報酬が上がる、あるいは下がるような手当を設けることがはたして正しいのか。家を買う、配偶者を持つことは自己選択でしかない。職務給を導入するに当たって手当の支給が適さないと判断されたら、導入後に手当の分を基本給に組み入れ、段階的に減額して廃止するということになる」

持ち家があるのか、結婚しているのか、子供がいるのかという本人の属性は、職務や成果とは関係ない。ジョブ型賃金の根幹を言い当てている。