ビジネスパーソンにとって身近な疾患である「うつ病」。患者の約6割が再発を経験しているという。精神科医の石郷岡純さんと産業医の野﨑卓朗さんは「症状が軽快して、復帰が見えてきた時期こそ注意が必要」と口をそろえる——。
闇を感じる
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うつ病の経済損失は2.7兆円。見えない生産性低下も課題に

厚生労働省の調査によると、うつ病などの気分障害の総患者数は、平成8年(1996)の43.3万人から平成29年(2017)の127.6万人と、21年間で約3倍近くにまで増加している。現役世代でみると、国内企業の9.2%(※1)がメンタルヘルスの不調により休職した従業員を抱えている状況だ。

※1 出典=厚生労働省:令和2年「労働安全衛生調査(実態調査)」結果

推計されるうつ病の経済的損失は約2.7兆円(2009年単年度)(※2)。その内訳は、うつ病で自殺した人が亡くならずに働き続けた場合に得られる生涯所得が8800億円(※3)。「アブセンティーズム(休職している状態)」と、「プレゼンティーズム(出勤はしているが本来のパフォーマンスが発揮できず生産性が低下した状態)」による損失が9200億円(※4)と、多くを占めている。

※2~4 出典=World Mental Health Japan Surveyより

とくに近年は、見えない生産性低下といわれる「プレゼンティーズム」がおよぼす影響が注目されている。心身が健康でなくても出勤はできているため、状態の把握がしにくいこと、周囲にも影響をおよぼすこと、労災などに発展する危険性を抱えていることが懸念される。

このように社会的損失の大きいうつ病は、一進一退を繰り返しながら回復し、寛解に至っても6割の人が再発するという。回復の判断の見極めが難しい疾患なのだ。