誰も出口に手をかけられなかった1年前と現在では状況が全く異なる。既に、手本を示す好例が海外にある以上、その後追いに注力するのが普通ではないのか。
このままいけば日本のワクチン接種率は英国やイスラエルといった当初の先頭集団を捉えることになりそうだが、「戦略無き経済」にとっては宝の持ち腐れになってしまう。
懸念されるロックダウン法制化議論
ここにきて10月以降の行動制限緩和が頻繁に報じられ始めている。そうであってほしいと願うばかりである。「菅政権の実績作り」と揶揄する声もあるようだが、難癖が過ぎるだろう。
上述したように、ワクチン調達と接種率向上は菅政権の紛れもない「実績」であり、これをもって経済正常化に舵を切るのは上述してきたようにグローバルスタンダードと言える戦略である。正しい政策の下、10~12月期はせめて潜在成長率並みの軌道に戻ることを期待したい(潜在成長率では全く足らないのだが)。
懸念されるのは、ここにきて、ロックダウンを法制化して機動的にこれを決断できるような流れが出てきていることである。既に河野行革担当相を始め総裁選候補者が前向きな検討を口にしている。ことここに至るまでの展開を踏まえる限り、「合法化したからと言って使うわけではない」という言い分を真に受けることはできない。
ロックダウン法制化は世論の支持を受けての議論であり、それを受けて自民党総裁に選出され、首相にまでなれば、そのオプションを行使しない方が政治的に間違っている。「世論は間違えることもある」という前提に正しい政治的判断を下してもらいたいと思うばかりである。
これまでの緊急事態宣言と同様の温度感でロックダウンが乱用されれば、日本経済を待つ未来はあまりにも暗い。年初来、金融政策効果の及ばない株式・為替市場では日本回避の潮流が根付いていてきた。菅首相の総裁選不出馬表明以降の急騰は報じられている10月以降の行動規制解除への期待含みだろう。
しかし、ロックダウン法制化に至れば、また株は反転下落するだろう。円相場は未だ実質実効ベースで1970年代前半並みの安値が続いているが、ロックダウンはこの動きを加速させるはずだ。
そこまでするほど日本にとってのCOVID-19の感染状況は甚大なものなのか。為政者には海外情勢を踏まえた上での冷静な判断を期待したい。