40代以降は「何かを足す」より「悪いものを引く」

あなたはこれまで、自分の健康を守るために、いろいろな健康法に興味を持ち、ときには実際に試してきたはずです。私は、それらを否定するつもりはありません。

でも、とくに40代以降は、もっと大局的な目を持たなければなりません。サプリメントを飲んだり、スポーツクラブに通ったり、マッサージを受けたり……そうした「外から加える要素」よりもはるかに大切なファクターがあります。

自分の体内で生成されている有毒物質を体外に排出する機能が、どの程度、働いているかを見なければなりません。「足すことよりも引くこと」を考える必要があるのです。

もともと、私たち人間の体は精密機械のようによくできていて、それぞれの部品が絶えず正確に働くことで健康を維持しています。あたかも、有能なAIが監督して稼働している工場のようなものです。

そこでは、さまざまなものが新しく生成され、同時に不要物もできます。この不要物がうまく排出されないと、健康は損なわれ、最終的には死に至ります。

不要物の排出というと、便や汗をすっきり出せばOKだと思っている人がいますが、まったく違います。あなたの体内に蓄積した毒素や老廃物の排出は、精密機械の中でもとくに繊細せんさいで複雑な部品である腎臓が担っています。腎臓が体に悪い物質を濾過ろかして、尿として体の外に出してくれており、その働きがあって、すべての人が命を維持することができているのです。

働き盛りの世代は「一刻も早く取り組むべき」

ところが今、働き盛りの世代を中心に、この重要な機能(腎臓)が壊れかけている人が激増しているのです。

腎臓には、老廃物や毒素を濾過するための大切な膜があります。たとえて言うならば、エアコン内部のフィルターのような役割をしています。

エアコンのフィルターが手入れされることなく目詰まりしていたりボロボロになっていたりすれば、部屋中にカビや悪臭、汚い空気が循環してしまいますね。それと同じことがあなたの体内で起き、体中に老廃物や毒素が蔓延まんえんしてしまいます。

でも、腎臓は壊れかけているのに、きしみ音すら出さないので本人は気づきません。自覚したときにはもはや修復不能になっているのです。

充実した後半生を目指したいのなら、腎臓の解毒機能を少しでも高く維持することが必須です。そのために、ふだんは沈黙している腎臓の声をいかに聞くか。これこそが、現代人の健康管理の一丁目一番地です。

私は、40年間医療の現場に立ち、35年間腎臓病治療の研究を続け、それにより患者さんたちの腎臓を治してきました。その立場から、働き盛りの世代が一刻も早く取り組むべき課題は「これ」だと確信しています。

普段から健康に留意して仕事や生活を大事にしている真面目な人たちが、「知らされていなかった」というだけの理由で腎臓を壊し、悔しい人生を歩むことになる事態をなんとしても避けたいのです。