世界で女子サッカーが強くなってきている
——オリンピックで、なでしこジャパンがベスト8に終わり、当初予想していた状況よりもさらに厳しいなかで開幕を迎えることになりました。
【岡島】なでしこジャパンが活躍できなかったのは彼女たちの力が落ちたわけではなく、他の国の力が上がったんです。アメリカがスウェーデンに負けたっていうのも、世界中の女子サッカーの力が拮抗してきた証拠です。その中で力をつけてきたのがヨーロッパ。ヨーロッパでは近年多くのプロリーグができました。女子サッカーにちゃんと投資するようになった成果が2019年のワールドカップでも、今回のオリンピックでも出ました。だから日本もプロリーグであるWEリーグが鍵を握る。これから、2023年のワールドカップ、2024年のオリンピックでどう変わったか見てくださいという気持ちです。
——変わらなければいけないですね。
【岡島】はい。もちろん環境面もそうですが、リーグとしてやっていかないといけないのはやっぱり海外のトップ選手を連れてくること。連れてくるだけの資金がクラブに入るように興行的な成功をさせていく。そのためには観客を入れないといけない。今年は特に女子サッカー以外のコンテンツが必要だと思っています。スタジアムでの体験をサッカーだけではないものにしていきたいです。
子どもたちの声でスタジアムを埋めたい
——ヨーロッパでホットなリーグといえばイングランドが浮かびます。彼女たちは国内リーグからほぼ出ない。有力な選手がそこに集まってくるからです。WEリーグがそうなるためには何が必要ですか?
【岡島】やはりサラリーですね。オリンピックで3位になった男子のメキシコ代表はほとんどの選手が国内リーグに所属していますが、とてもレベルが高かった。優秀な選手たちを自国にとどめておく、トップ選手を呼ぶためには高い給料が必要なんです。ジェンダー平等という文脈で各クラブにパートナー企業がつくことが一番ですよね。企業同士がつながれば今までにないコラボが見られるかもしれません。
——開幕まであとわずかです。どんなプロリーグを見せていきたいですか?
【岡島】女の子の憧れになるリーグにしていかないといけない。それには地元の子どもたちが試合を見に行きたいと思ってもらえるものにする必要があります。子どもたちと選手が接点を持つことも大事。コロナウイルスの事情もありますが、サッカースクールや小学校に行って話をする機会、接する機会を増やして、興味を持ってもらうためにSNSでの発信も必要だと感じます。子どもたちの声でスタジアムを埋めるのが私の理想なんです。
構成=早草紀子 取材協力=六川則夫
1972年に日本初の女子サッカークラブ「FCジンナン」でプレーし、日本代表に選ばれる。高校1年の時、東京都サッカー協会主催のリーダースクールを女性として初めて受講。89年に海外転勤を機に選手を引退し、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券やメリルリンチなど日米の金融業界で活躍する。2020年、WEリーグ初代チェアに就任。