一般社員はかなり甘いケースも多い
こうした「不適切な質問」は新卒採用の現場では常識なのか。研修・教育会社の人事課長は「もちろん知っている、常識だ」と語る。
「面接を担当する社員とは、どのような視点で学生をみるのか、どんな流れで実施するのか、事前に打ち合わせを行う。その際に質問内容の注意事項として『不適切質問』について伝えている」
ただし新卒採用の面接では人事部だけではなく、一般の社員も多く駆り出される。全員に周知徹底できているのだろうか。新卒採用支援を手がけるモザイクワークの髙橋実副社長はこう語る。
「基本的にまともな採用担当者はほぼ理解していると思うが、趣旨を理解しないままやっている採用担当者も多いのではないか。一般社員になるとかなり甘いケースも多いだろう。人事と現場が一緒になって新卒採用に取り組んでいるところは遵守していると思う。不適切質問など面接留意事項を徹底しているかどうかは、コンプライアンス意識の強い会社とそうでない会社と相関があると思う」
面接の話の流れでつい聞いてしまう
実際に学生との会話の流れで「不適切質問」をしてしまうことがあると語るのは飲食チェーンの人事課長だ。
「面接に慣れていない社員が質問してしまうのが、家族の職業だ。話の流れで『ご両親は何をやっているの?』と聞いてしまう人が多い。その人の知識や考えを知りたいために『どんな本を読んでいるの?』とか『日経は読んでる?』と聞く人は少なくない」
とくに最近はコロナ禍の巣ごもりもあるのか、エントリーシートに「趣味は読書」と書く学生も少なくないという。前出の研修・教育会社の人事課長は「どんな本を最近読みましたか、という質問は出がち。また、学生の方から話の流れで読んだ本をあげてくる人もいる。そこを少し深く聞いてみようという流れがほとんどだ。そういう意味では『愛読書を聞く』ということとは、ニュアンスが違う」と語る。
面接担当の社員に対する事前指導は必要だが、どのように話すのかなど質問の仕方をよほど徹底しなければ学生に誤解を与える可能性もある。また、適性・能力を見極めるといっても、人柄や人物重視が中心の日本の新卒採用では思わず聞いてしまいそうな質問もある。