権利意識の強いタイプは要注意

では、こうした「逆パワハラ部下」を見抜く方法はあるのかでしょうか。

残念ながら採用の面接では難しいだろうと思います。面接ではいくらでも猫をかぶれますので。

兆候としては「義務を果たしていないのに権利ばかり主張する」タイプが怪しいですね。たとえば、まだ一人前の仕事もできないのに、始業時間ギリギリに出社して制服に着替え、朝礼に遅れて参加する。朝礼に間に合うよう準備してほしいと言うと「法的には、着替える時間も就業時間に含まれますから」と主張する。ほかにも、まだ対面できめ細かい指導が必要な研修期間であるにもかかわらず、随分上の先輩を引き合いに出して「あの人がテレワークなのに私が出社しなくてはならないのはおかしい」と文句を言う。やるべきことをやらず、権利ばかり主張するタイプは、かなり危ないですね。

もともとそういった権利意識が強いところに、優しすぎる上司がからまっていくと、そこからエスカレートしていきます。とにかくこういった部下を持った上司は、1人で抱え込まず早めに第三者に相談しましょう。

この問題は、深刻化してから発覚することがほとんどです。上司自身が、周りから「管理能力がない」と思われることを恐れて1人で抱え込み、第三者への相談が遅れてしまうことが多いのです。

問題社員に対しては、上司はとにかく早めに周りと連携し、組織全体で正していく姿勢を持つことが何よりも重要なのです。

構成=池田純子

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。