育休後の時短勤務
【濱】育休取得者をはじめ全従業員に対して、「家庭を大切しながらも『自身の』キャリアを考えて歩んでほしい」という会社の期待やメッセージを伝えています。併せて、時短勤務を長くとらなくとも(フルタイム勤務に戻しても)、両立できる働きやすい制度や体制を整えています。例えば、コアなしフレックス、場所を問わない在宅勤務、シェアオフィス、自宅PCやスマホでの業務可等です。結果として、育休取得者も、いつ時短を取得するか、いつフルに戻すかなど、キャリアや生活を複合的に考えられているようです。
こうした時短制度や考え方は、女性をはじめ全従業員に広く根付いています。特にコロナ禍以降は、在宅勤務やコアなしフレックスが後押しして、フルタイムでの復帰を選択する傾向が高まっています。ちなみに、休職制度や時短勤務を使っても、昇進に影響するようなことは一切ありません。
【木下】育休後は、柔軟な働き方を用意した上でフルタイムに復帰してもらうということですね。女性のキャリアを伸ばすことに主軸を置いた、すばらしい仕組みだと思いました。女性活躍やダイバーシティ推進に関して、今後の取り組みや目標値をお聞かせください。
【濱】現在の女性活躍推進計画は2021年が最終年度となっています。これはグループの主要4社の女性リーダー比率を、2013年時点の4%から3倍の12%にするというもので、ほぼ達成できる見込みです。今後は新たな計画の策定を進め、女性リーダー比率は2030年までに「組織文化に変化をもたらす閾(しきい)値」といわれる30%を目指す予定です。さらに、役員や組織長などの意思決定層にも女性に参画してもらいたいと考えています。
多様性の推進については、障害者やLGBT、シニア層の活躍推進、およびアンコンシャスバイアスの払拭に取り組んでいるほか、従業員が多様性推進を自分事化して考えられるよう、意識調査による課題の洗い出しや研修などを行っています。また、社外の価値観や経験値を取り入れるためキャリア採用にも力を入れており、今では年間に入社するホールディングス原籍従業員の30%程度がキャリア採用者となっています。
【木下】最後に、女性活躍やダイバーシティ推進に悩んでいる人事関係者の方、特に女性が管理職になりたがらないという悩みをお持ちの方に向けて、励ましのメッセージをお願いします。
【濱】まず女性が管理職になりたがらない背景を考え、もしリーダーシップに自信がないということであれば「自己の成長のため」と理解してもらうことが大切だと思います。リーダーシップは役職の有無にかかわらず全員に求められるものであり、何としても成し遂げたいという熱意があれば必ず発揮できるものです。具体的にどう行動すればいいかわからないという人に対しては、まず同僚やチームのメンバーを励ますことから始めてもらってはどうでしょうか。仕事を通じて人を励まし、その人の成長を支援することがリーダーシップの第一歩だと思います。
構成=辻村洋子
1991年キリンビール株式会社入社。広島工場物流、人事部などを経て2011年よりキリンホールディングス株式会社経営戦略部主査。その後キリン、台灣麒麟啤酒股份有限公司を経て19年よりキリンホールディングス株式会社人事総務部長。21年より現職。
2008年キリンビール株式会社入社。福岡工場総務担当。キリンビジネスエキスパート人事サポート部、キリン人事総務部兼メルシャン人事総務部を経て19年より現職。現在、キリングループの多様性推進・女性活躍推進の企画、運営(研修事務局)などを担当。