女性向け研修やリーダー育成施策の中身

【木下】ビール会社というとどうしても超体育会系、男性社会というイメージがありますが、取り組みによって変化はありましたか? また当初は抵抗もあったのではないでしょうか。

【濱】2000年代後半入社の世代ぐらいから、現場で女性総合職がたくさん活躍するようになりました。それにつれて男性上司の間で女性への評価も高まり、難易度の高い仕事もアサインするようになるなど少しずつ雰囲気が変わっていきました。

それでも最初は、冷めた反応をする男性も多かったんです。社長が強く宣言したので統括本部長や工場長は前向きでしたが、その下のリーダー陣や男性はまったくひとごとというか、大半は「何か女性向けのことをしているらしいね」ぐらいの捉え方でした。飲み会の席などでは「女性だけ特別扱いをしている」といった声も出たようです。一方、女性からは「変化に期待している」という声もあれば、逆に「特別扱いされてもかえって居心地が悪い」などという声もありました。

このように当初は不安感や抵抗もありましたが、女性活躍推進の意義を粘り強く発信することで、皆少しずつ前向きに捉えてくれるようになりました。お客様ニーズへの理解を深めて価値を提供していくためには、特定の属性に偏った組織風土のままではいけない。そこを伝え続けたことが、男性の理解や女性のモチベーションアップにつながっていったと感じています。

【木下】併せて、女性に対してはさまざまな研修も行っていらっしゃいますね。それぞれの内容や目的について教えてください。

【豊福】女性活躍推進施策として、3つの活動を紹介します。1つめは、入社3年目の女性とその上司が一緒に受講する「キャリアワークショップ」です。多様性推進の必要性や女性特有のキャリア開発について、また早回しのキャリア(出産・育児を迎える前に早目に成功体験を積み、得意領域を作る)をどう歩むべきかについて知ってもらうことを目的にしています。こうした事柄はライフイベントを迎える前に知っておくことが重要だと思い、入社3年目というあえて早いタイミングで受講してもらっています。

2つめは、経営職を目指す女性総合職向けの研修「キリンウィメンズカレッジ」です。女性リーダー比率を8年で3倍にするという目標の下、リーダー育成施策として展開しています。キリングループ各社から本人の応募文と上司の推薦文によって選抜し、受講者は半年間ビジネススキルを学びながら、自職場の課題解決につながる提言を作成します。最後には、社長の前で自らの提言を発表し、受講後は約1年間、プロジェクトリーダーとして提言を実行します。ここでリーダーシップ発揮の楽しさを体感し、さらに成長意欲が増したという人も少なくありません。

また研修ではありませんが、育児と仕事の両立を推進する施策として、オンラインでの育児サロンを開催しています。育児休業者に加え、リーダーや同僚、社外の配偶者等、両立に関心がある人なら誰でも参加でき、不安払拭やグループを横断した仲間づくりに役立っています。

木下 明子『プレジデント ウーマン』編集長
撮影=田子芙蓉
木下 明子『プレジデント ウーマン』編集長