現役世代の5割程度が年金支給額の目安
【A田】「老後に2000万円ないとマズい!」というニュースを見て、何かしなきゃと思いました。年金ってもらえないんですか?
【小林】年金の検討会が5年ごとに開かれていて、年金制度を続けていくための計画が立てられています。そこで基準になっているのが、「現役世代の平均収入(手取り)の5割程度の年金をもらえるように設計しよう」ということなんです。たとえば、現役世代の平均収入を月30万円とすると、年金は月15万円もらえる設計を目指すということです。だから、「現役時代のままの生活は続けられないので、その分自分で貯めておかないとね」という話が、「老後2000万円問題」の発端です。
【A田】今の高齢者は、年金だけで暮らせているのですか?
【小林】まず、そこに勘違いがあって、「そもそも年金だけで暮らせるって、誰が言ったの?」ということです。年金制度は、核家族化で子どもが親を支えるのが難しくなってきたから、社会全体で支えましょうと、戦後にできた制度です。それだけで暮らせる前提ではありませんでした。
【A田】年金がもらえても貯蓄は必要だということですか?
【小林】日本の年金は、「賦課方式」といって、現役世代が稼いで納めたお金をそのときの高齢者が使うというもので、自分が高齢者になったときには、そのときの現役世代が支えてくれるので、もらえなくなることはありません。しかし、少子化で年金保険料を払ってくれる人が減ると、将来もらえる額が減る、もらえる期間が短くなるなどはあるかもしれません。いずれにしても、老後に備えて蓄えておくことは必要ですね。
自営業者やフリーランスは特に備えが必要
【A田】人によってもらえる年金の種類や金額って違うんですか?
【小林】会社員、公務員などは「2階建て」といって、国民年金にプラスして厚生年金がもらえます。平均月額(65歳以上、令和元年度)は、男性約17万1000円、女性約10万9000円なので、夫婦共働きなら、約28万円くらい受け取れます。しかし、1階の国民年金しかない自営業者やフリーランスなどは、平均月額(老齢年金・25年以上、令和元年度)が約5万6000円。夫婦でも約11万2000円となり、これだけで暮らすのは厳しいでしょう。
【A田】年金を払っている、払っていないで違いが出ますか?
【小林】年金保険料を払っていないと、国民年金の受取額が減るし、加入期間が10年未満だと、年金自体がもらえなくなります。また、亡くなったときに遺族年金がもらえない、障害を負っても障害年金がもらえないなどの事態になります。
【A田】そうなんだ……。年金の額って、何によって決まるんでしょうか。
【小林】厚生年金は、収入と加入期間で決まります。国民年金の年金保険料は定額なので、加入期間のみです。収入によって受取額が変わることはありません。
【A田】とにかく会社員をやめてから将来が不安なのです。
【小林】フリーランスは国民年金しかないので、自分で老後に備える際の優遇制度がいくつかあります。国民年金基金、付加年金、小規模企業共済などで、掛け金が全額所得控除になるなどのメリットがあります。
【A田】会社員で年金が不安な人は、何をしておくべきですか?
【小林】会社員もフリーランスも使えるおトクな制度がiDeCoとつみたてNISAです。老後に備えるためなら、まず、iDeCoを検討しましょう。
【A田】ありがとうございます。自分がやるべきことがわかりました。
構成=生島典子 撮影=小林久井(近藤スタジオ) イラスト=秋田カズシゲ
国税局の国税専門官、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所に勤務。2017年、金融関係のフリーライターに転身。著書に『すみません、金利ってなんですか?』(サンマーク出版)、『あんな経費まで! 領収書のズルい落とし方がわかる本』(宝島社)などがある。