82歳の女性元宇宙飛行士候補も宇宙へ
7月、イギリスの起業家のリチャード・ブランソン氏と、アメリカのアマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏が、それぞれ自分たちの作った企業の宇宙船で宇宙空間へ到達した。
ブランソン氏自身は、71歳の誕生日直前に宇宙へ。そして、彼とともにヴァージン・ギャラクティック社の宇宙船で、地球の準軌道(サブオービタル)に短時間滞在したのは、34歳の女性科学者であり、ヴァージン・ギャラクティック社幹部のシリシャ・バンドラさんだった。彼女は今回、史上2人目のインド生まれの女性宇宙飛行士となったが、メディアでのインタビューで、昔から宇宙飛行士になりたかったが、視力も足りず、宇宙パイロットかエンジニアになる夢は高校の時に諦めたと語っている。
また、ベソス氏率いるブルー・オリジンの宇宙船には、1960年代に宇宙飛行士の訓練プログラムに参加したが宇宙に行くことができなかった82歳のウォリー・ファンクさんや、18歳のオリバー・デーメンさんも搭乗した。この2人は宇宙旅行を経験した最高齢と最年少だ。
「若いから、シニアだから宇宙に行けないということは、もはやありません。働き盛りの40代、50代も行ったし、女性も行ったし、男性も行った。そういう意味でダイバーシティがあった」と、世界的な経営コンサルティング会社、A.T.カーニーのプリンシパルであり宇宙業界に詳しいSpacetide代表理事兼CEOの石田真康さんは言う。「今回のフライトは、多くの人にとって、宇宙という場所が、ひょっとしたら近い将来自分も行けるところなのかもしれないと思えるようになった、最初のイベントなのかもしれない」
過酷な宇宙飛行士訓練
以前、私は、日本の宇宙飛行士の山崎直子さんにインタビューをしたことがある。山崎さんは、女性だから宇宙飛行士として不利だったというようなことはないとは言っていたが、彼女の訓練の話を聞いた時、私には絶対できないことだと感じたのを覚えている。
たとえば、ソユーズ宇宙船が着陸すべき場所から何百キロも離れたところに不時着した想定で、激寒のロシアの雪原で行われた訓練。救助がすぐに来ないことを予想し、宇宙船の中のものだけで、3日間生き延びなければならないという。ソユーズの中から斧を引っ張り出し、周辺にある木を切って火をおこす。しかし、3日以上助けが来ないことを考え、1日目は何も食べてはいけないという決まりだ。そんな具合に、宇宙飛行士の訓練の90%は、想定外の事故にどう対処するかに備えるものだったと山崎さんは話してくれた。