冷凍食品の消費量は大きく伸びている。消費者心理に詳しいマーケターの桶谷功さんは「冷凍食品の売り場に異変が起きている。ギラギラしたパッケージのギョーザやチャーハン、お弁当といった従来の売場とは離れたところに第2の売場が設けられているのです」と指摘。そこで売られているものとは――。

高級スーパーのような雰囲気

こんにちは、桶谷功です。

冷凍食品の消費量は右肩上がりに伸び続けています(図表1)。

そんな中、最近、スーパーの食料品売り場に、ある変化が起きているのにお気づきでしょうか。

じつは冷凍食品の売り場がどんどん増えています。それも従来のように、冷凍食品だけが一カ所に集められているのではありません。

いつもの肉売り場の冷蔵ケースの横に、背の高い縦型の扉付き冷凍ケースを設置し、そのなかに冷凍肉や、肉を使った冷凍のお総菜を並べる。あるいは魚売り場のすぐ隣に、冷凍の魚の切り身や魚介類、そして「殻付きあさりのガーリックバター風味」「エビとブロッコリーのバジルバターペンネ」といった比較的高価な冷凍総菜も置く。こんなふうに、今までにない売り方をするようになったのです。

冷凍食品といえば、少し前はスーパーの安売りの目玉商品でした。毎日のように4~5割引のセールがおこなわれ、「半額!」という派手なポップが躍っていたものです。

しかし新しい冷凍食品売り場には、まるで輸入食材を扱う高級スーパーのような、落ち着いたムードが漂っています。いったいなぜ、こんな変化が起きたのでしょうか。

手間暇かけてつくられた冷凍ギョーザ

まず冷凍食品そのものが、コロナ禍で売り上げを伸ばしていることが挙げられます。また冷凍技術が進化して、味もずいぶんおいしくなりました。

そんななか、味の素の公式Twitterがこんな発言をしました。

「冷凍餃子を食卓に並べたら、夫に手抜きだと言われた」というあるTwitterユーザーのつぶやきに対して、「冷凍餃子を使うのは、手抜きじゃなくて、手“間”ぬきですよ!」とコメントしたところ、喝采を浴びたのです。

じつは「手抜きじゃない、手間抜きだ」というのは、業界筋ではよく言われていたフレーズだそうですが、一般には知られていなかった。さらに味の素はこれを機に、冷凍ギョーザができるまでの144の作業工程を動画で公開。「こんなに手間暇かけてつくられています」とアピールしたのはさすがでした。