冷凍食品を取り巻く競争が激化する中、イオントップバリュの「ワントレー」シリーズが好調だ。物価高騰が続く中で、いかにして値頃感と食べ応えの両立を実現できたのか。生活史研究家の阿古真理さんが取材した――。

冷凍食品の利用に罪悪感がある人は少数派

スーパーに何列も並ぶ冷凍ショーケース。ガラス扉の向こうにはコロッケに餃子、パスタにたこ焼き、今川焼、フライドポテト、ブロッコリーなど、日々の食事をすべて賄えそうなほど充実している光景が、すっかり珍しくなくなった。

冷凍食品を選んでいるアジア人女性
写真=iStock.com/PK24
※写真はイメージです

冷凍食品市場は、拡大を続けている。日本冷凍食品協会の調査によれば、2024年の国民1人当たりの消費量は、1968年の調査開始時の約30倍、電子レンジ対応冷凍フライ商品が発売された1994年と比べても約1.62倍もある。

同協会が2025年2月、全国の25歳以上の男女1250人を対象にした利用状況調査によると、冷凍食品を「ほとんど又はまったく使わない」人は女性が14.2%、男性が16.0%しかおらず、週2~3回程度利用する人が男女とも最も多い。

使う頻度が1年前と比べて上がった人たちの理由のトップは「調理が簡単で便利だから」で、女性が75.8%、男性が82.8%と大半を占める。その他、男女とも「おいしいと思う商品が増えたから」「野菜など生鮮品の価格が上がったから」「手ごろな値段だから」「忙しくなり、食事を作る時間が減ったから」という理由が多い。

また、冷凍食品を食卓に出すことに対し、「手抜きだと思う」女性は27.0%、男性は15.4%、「罪悪感がある」という女性は22.6%、男性は11.4%、とあきらかに少数派だ。

一昔前に比べ、消費者の見る目がすっかり変わった食品とも言える。罪悪感については家事に対する価値観の変化だが、評価を上げる消費者が増えたのは、提供側の努力によるだろう。そこで、コロナ禍前の2019年と比べ、2024年の冷凍食品の売り上げが約2倍にも伸びたというイオンのプライベートブランド「トップバリュ」を擁するイオントップバリュ取締役の髙橋幹夫商品開発本部長に、同社の試みについて聞いた。

販売価格は据え置き具材を工夫する

トップバリュの冷凍食品が人気の理由は、2つある。1つ目が、価格上昇を抑えるための工夫だ。

同ブランドの一番人気は、年間1000万食以上売れる「トップバリュベストプライス」シリーズの「ギョーザ」。2025年6月のリニューアルでは、豚肉と鶏肉の配合比率を高めたのに、価格は据え置きの12個入り本体178円(税抜き価格、以下同)。「製法や配合を工夫することで、肉の食感とジューシーさがキャベツのシャキシャキ感とマッチする仕上がりにできました。レシピを改良し続けて、味は格段によくなっています」と髙橋本部長は説明する。

値頃感が強い人気商品は、同社が開発した「ワントレー」シリーズ。メイン料理、副菜、主食がワンプレートに納まり、電子レンジに入れて温めるだけで後片付けも簡単。手頃価格のトップバリュベストプライスの「五目ごはんと鶏肉の黒酢あん」は一人前250グラムで本体価格298円。

「五目ごはんと鶏肉の黒酢あん」(250グラム298円)。ごぼう・ニンジン・タケノコの五目ごはん、グリルチキン、ホウレンソウの副菜がそろったワンプレート。
(左)写真提供=イオントップバリュ、(右)撮影=プレジデントオンライン編集部
「五目ごはんと鶏肉の黒酢あん」(250グラム298円)。ごぼう・ニンジン・タケノコの五目ごはん、グリルチキン、ホウレンソウの副菜がそろったワンプレート。

髙橋本部長は、「お子さんが塾に行く前に召し上がっていただくなどの需要で、好調に売れています。『おろしハンバーグと香味醤油パスタ』は10種類の野菜を入れ栄養バランスを考慮した商品で、300グラム入り378円。中学生ぐらいを狙った『ガッツリ飯×ガッツリ飯 ペペロンチーノ&ガーリックライス、チキンのせ』は420グラムもあって、しっかり食べていただける商品にしています」と説明する。

食材の価格や燃料費が上昇する中、イオンがお得感のある価格をキープできるのは、顧客のニーズに合わせた価格で提供できるように商品を開発しているからだ。先のペペロンチーノの場合、本体価格は498円。「ワンコインに納まる形で、中身の具材で工夫しています。さまざまなコスト上昇を受けて価格見直しをせざるを得なくなっていますが、冷凍食品では値頃感を外さないようにリニューアルしています」と話す髙橋本部長。

メーカーが在庫を持たずに済むよう、製造できた段階で引き取る、店頭で売る乾麺と冷凍食品で使う乾麺の仕入れ先を統合するなど、イオンの規模を活かした大量仕入れと効率性の高さでコストを抑える工夫もしている。