「価値ゼロ」とまで言われた鍛造を営む地方の中小企業を、100億円の価値ある企業に成長させた平美都江さん。劇的なコストの削減と生産の効率化を実現した平さんが「働く原動力は結局、お金」と言い切る理由とは――。

※本稿は、平美都江『なぜ、おばちゃん社長は価値ゼロの会社を100億円で売却できたのか 父が廃業した会社を引き継ぎ、受注ゼロからの奇跡の大逆転』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

会社の中にある“利益の源泉”に気づけるか

少し自慢します、今うちの会社は、最も社員が多かった時期に比べて、

平鍛造の平美都江社長。
撮影=奥川純一
平鍛造の平美都江前社長。

現場従業員数は3分の1
生産スピードは20倍

になっています。ものすごくコストが下がり、劇的に効率化できている。もちろん会社は高く評価される。

何も考えてこなかった会社なら、どこであろうと、少なくとも従業員は今より減らせるし、スピードは倍増ぐらいできます。両立可能。

反対に、世の中の経営者はなんで取り組まないのか不思議で仕方ない。自分の会社の中に「宝の山」「利益の泉」が隠れているというのに……。

 

現場改善の準備のための準備

スピード生産のために大切なのは、準備です。考えてみれば当たり前の話で、前もって準備していたほうが何事もスムーズに進みます。

ただ、これも従業員が自発的に気づいて勝手にやってくれるわけではありません。経営者が気づいて、何を準備するかを具体的に明確にしておかなければならないのです。

省人化は、クビ切りではないし、急に機械を購入してもできません。まずは、どこにムダな人員、手持ち無沙汰の人がいるのか、どの現場のどの工程でアイドルタイムがあるのかを把握することから始まるのです。いわば、準備のために何が必要かを考えるだけ。事前に揃えることが本当の準備です。