源泉徴収は、税金の取り漏れを防ぐ仕組み
【A田】3年前にフリーランスになってから自分で確定申告をするようになりましたが、いまだにわかっていなくて。「源泉徴収」って何ですか?
【小林】税務署が税金の取り漏れを防ぐためのシステムです。会社員の場合は、あらかじめ仮計算で出した額で所得税を取っておいて、それを差し引いた額で給与を払います。フリーランスの場合も同様です。たとえばフリーライターとして、原稿料が1万円の仕事をした場合、仕事先の会社は、1万円から約10%の約1000円を所得税の源泉徴収分としてあらかじめ引いて、残りの約9000円をライターに払います。
【A田】それって、「仮」なんですか?
【小林】はい。そのため、1年間の給与や収入、経費などの総額が確定した後に、精算する仕組みがあります。会社員は年末調整、フリーランスの人は確定申告が正確な税額を計算する制度で、仮計算で徴収されすぎていたら還付金として返ってくるし、少なかったら追加で納めます。
【A田】会社員時代はよくわかっていなかったのですが、フリーランスになると納付するべきお金の書類がたくさんきます。給与から引かれているものって、いろいろありますよね。
【小林】所得税がだいたい10%くらい、住民税も10%、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などの社会保険料が15%くらい引かれています。会社はあらかじめこれらを差し引いてから給与を払っていて、差し引いた分は、それぞれの役所に納めています。所得税は税務署(国)に、住民税は社員が住んでいる地方自治体に、社会保険料は年金事務所や健康保険組合などに納めます。
生活上の負担分が引かれる「所得控除」はやさしい
【A田】「所得」って何ですか? 「収入」とは違うもの?
【小林】収入から必要経費を引いたものが所得で、この部分が税金の課税対象になります。
【A田】「所得控除」って何ですか?
【小林】税金の計算は、収入から必要経費を差し引いて「所得」を出しますが、そこからさらに引かれるものが「所得控除」です。たとえば、年収1000万円の人が2人いたとして、1人は1000万円で裕福な暮らしをしているけれども、もう1人は扶養家族がたくさんいて、しかも家族が病気がちで生活がそれほど楽ではないとします。税金の負担が同じにならないように、後者に所得控除を行います。所得控除には、社会保険料控除、医療費控除などがあり、「生活上の負担分を引いてあげますよ」というイメージです。
【A田】「控除」って、やさしいんですね。たまに会社員でも確定申告している人がいますが、何ででしょう。
【小林】会社員の場合、一般的な控除は年末調整でカバーできますが、年末調整で申告できなかった場合は、自分で確定申告を行います。医療費控除を受ける年、住宅ローン控除を受ける最初の年など。
【A田】副業をする人が増えているけれど、収入がいくらを超えたら申告が必要ですか?
【小林】副業で会社に勤めている人は、給与が年間20万円を超えたら、申告が必要です。会社員がフリーランスで副業をしているときは、経費を差し引いて利益ベースで年間20万円を超えたら申告が必要になります。
【A田】最後に、そもそも「税金」って、なぜ納めるんでしょうか?
【小林】税金は、国や自治体を運営するために使われています。税金がないと、それらが機能しなくなります。政府は毎年予算を立てて税金の使い道を決めています。少子化対策にいくら、防衛費にいくらなどと配分されていますが、それに不満がある場合は、選挙に行って投票することで変えていくしかないわけです。
【A田】なるほど。私たちの税金で道路とかができていたりするんですね。