「批判」とどう向き合うか

けれども、ユーザー側の批判はすべて無視し、いいことばかりをサイトに載せるのかというと、そうではありません。

ぐるなびではきちんと精査をした上で、批判的な意見も載せるようにしています。

一例として、「前よりも味が落ちた」「先代と2代目の味が違う」などのコメントは掲載しています。

ただ、それだけではお店の信頼が損なわれてしまいます。

そのためにぐるなびでは、お客さまと飲食店、双方向のやりとりができるようにしました。

つまりユーザーの口コミに対して、飲食店側が返答できるようにしたのです。これもほかのサイトとは違う大きなポイントと言えるでしょう。

そもそも味の好みは人それぞれ。一方的に悪口を書かれるのは不公平でしょう。そのやりとりは計10回まででき、すべてサイト上に公開されます。

「欠点」は「長所」に変えていく

このように説明すれば、肯定的な口コミを優先して載せる理由について納得感が得られ、お店側が返答できるというシステムがプラス要素としてメディアに取り上げられる可能性もあるのです。

たとえば、他社の商品にはこんな機能がついている、でもウチはついていない。

そんなときは「確かに多くの機能はついていません。その代わりシンプルで使いやすく、コストも最低限に抑えました」とアピールできるでしょう。そういうストーリーのつくり方を常に考えて、特に競合が持っていない何かがあれば、そこを強調するのがポイントです。消費者もいいことだらけだと信用できません。

欠点は隠すよりも長所に変えていくのが、これからの広報に必要なスキルなのです。

栗田 朋一(くりた・ともかず)
PRacademy代表取締役

1971年、埼玉県浦和市(現・さいたま市)生まれ。明治学院大学社会学部卒。歴史テーマパーク「日光江戸村」を運営する大新東で広報を担当し、江戸村及びグループ会社全体のコーポレートPRを手がける。2003年に電通パブリックリレーションズに入社。その後、07年にぐるなびに転職し、広報グループ長を務める。現在は、自身で立ち上げたPRacademyの代表取締役を務める。著書に、『現場の担当者2500人からナマで聞いた 広報のお悩み相談室』(朝日新聞出版)がある。