マイナスをプラスのストーリーに

それまでおせち料理は百貨店に行ったり、お店で予約をして買うものだと、多くの人が思っていました。この事件を通して「ネットでおせちが買える」という認識が世の中に広まり、ぐるなび食市場のおせち販売は好調なスタートを切りました。

こう切り出すと、ほとんどの記者が「え⁉ あんなことがあったのに例年より売れているの? それはなぜ?」と興味を持ってくれます。

そして、今年ならではの現象や取り組みを紹介していくのです。まず2010年からやっていた「お試しおせち」に目をつけました。これは500円で買えるおせちで、お正月よりももっと前の、10月ごろにはお取り寄せができる商品です。おせち料理に入れる10品以上の料理が少しずつ、小さい箱の中に入っています。お客様はそれを食べて味を確認してから、「これならいいな」と思ったら、本番の3万円、5万円といったおせちを頼めるという試みです。このタイミングだからこそ、お試しおせちがみんなの不安を解消できるアイテムとして受け入れられると確信していました。

また、食材の産地や内容量など、おせちメニューに関する詳細な情報を明記することにしました。これをおせちを提供する店舗側に、厳格に義務づけたのです。

ビジネス会議
写真=iStock.com/byryo
※写真はイメージです

ユーザーの動向の変化もキャッチ

さらにサイト内でのユーザーの動きを調べてみました。すると、ウェブ上で商品を選ぶ際、その年は多くのユーザーがページの隅々まで見ていたり、製造元の会社概要まで見に行ったりして念入りに確認し、ページの滞在時間も延びていることがわかりました。

そして見ている時間は土曜日や日曜日の夜がほとんどです。

これが何を意味しているのかというと、そのページを家族みんなで見ているということです。おせちは家族で食べるものですから、家族みんなで選んでいるのでしょう。百貨店などに家族総出でおせちを見に行くのは大変ですが、インターネット上だと気軽にみんなで見て、選ぶことができます。それがインターネットで買う際のメリットでもあるのです。

さらに、インターネット上でアンケート調査を行い、おせちを食べたい理由や購入時に重視することや、お試しおせちへの関心度を聞き出したり、家族で選ぶという情報から、東日本大震災後の家族関係に関する設問も入れました。すると、6割以上の人が「親子関係を深めたい」と回答したので、この結果から、親子関係を深めるために、おせちをみんなで選びませんか、と呼びかけたのです。