“女性”のデータも取り入れたものづくりを

アストリッド・リンダーは衝突安全テスト用の女性ダミーの開発に取り組んでいる。女性の体格を正確に表現した初めてのダミーとなる予定だ。現段階ではまだ試作品だが、彼女はすでにEUに対し、衝突安全テストにおいて人体測定学的に正確な女性のダミーを使用することを、法律で規定するよう要求している。厳密に言えば、これは実際に法律ですでに規定されている、とリンダーは主張する。法的拘束力のある欧州連合機能条約(TFEU)の第8条には、こう記されている。

「欧州連合はすべての活動において、不平等を撤廃し、男女間の平等を促進することを目指すものとする」

自動車事故の重傷リスクが女性のほうが47%も高いことは、これまで看過されてきた不平等の最たるものだ。

ある意味では、なぜとっくの昔に衝突安全テストにおいて適切な女性ダミーが開発され、その使用が法的に義務付けられなかったのか、理解しがたいものがある。だがいっぽうで、これまで見てきたとおり、設計と計画において、女性や女性の体格がことごとく無視されてきたことを考えれば、まったく驚くには値しない。

スマートフォンの開発から医療技術や調理用ストーブまで、さまざまなツール(モノであれ、金融ツールであれ)が女性のニーズをまったく考慮せずに開発された結果、女性たちに大きな被害を与えている。さらにそのような被害によって、女性の生活には甚大な影響が表れている女性たちは貧困や病気に苦しめられ、自動車事故では命を落としかねない。設計者たちは、すべての人の役に立つ商品をつくっていると信じているかもしれない。だが現実には、おもに男性向けの商品をつくっているのだ。もういいかげん、女性のことも考えて設計をすべきである。

キャロライン・クリアド=ペレス(Criado Perez Caroline)
ジャーナリスト

1984年、ブラジル生まれ。英国国籍を持つジャーナリスト、女性権利活動家。オウンドル・スクール、オックスフォード大学ケブル・カレッジで教育を受けたあと、活動家として多くのキャンペーンに携わる。