総選挙でナンバー2に抜擢

そんな中で行われたのが、2015年の「リーダーズ総選挙」だ。

社長が役員を選ぶと、「社長に気に入られたから上に行けたのだろう」と受け取られ、組織全体が上の顔色を見ながら仕事をするようになってしまう。このため、正社員と勤続5年以上のパート従業員全員が匿名で投票し、会社ナンバー2となる執行役員を選んだ。

ここで120票中約70票を獲得したのが、当時33歳だった佐藤さんだった。

投票は匿名だが、票にはいいと思う人の名前だけでなく、なぜこの人がいいと思うのか、何を期待しているのか、なども書かれていた。

「後で、投票理由として書かれていた内容を社長から教えていただきました。『明るい』『元気がいい』『船橋屋が誰よりも好き』『これからの時代は女性よ!』などと書かれていたそうで、みなさんの期待や応援の気持ちを感じました」

会社の業績は順調に伸び、2015年からの4年間で売上高は32.2%増加。2020年はコロナ禍の緊急事態宣言による店舗休業などがあり、一時は前年同月の65%減となったが、ネット通販が急伸し、年間では前年比17%減にとどまった。

「ネット通販は昨年(2020年)5月だけで前年同月の3倍に急増し、製造や梱包が追いつかなくなりそうなほどでした。私もひたすら梱包してました(笑)。私、かなり速いんですよ。日持ちがしないので、その日に作ってその日に梱包、配送しなくてはならず、時間との勝負なんです」

愛社精神は会社で1番

文豪の相関図を見せながら船橋屋の歴史について熱く語る佐藤さん 撮影=プレジデントウーマンオンライン
文豪の相関図を見せながら船橋屋の歴史について熱く語る佐藤さん 撮影=プレジデントウーマンオンライン

佐藤さんは「社内で、私が一番、船橋屋のことを好きですから」と公言してはばからない。休みの日も、各地の図書館や資料館をめぐり、船橋屋にゆかりのある文豪などについて調べている。「(船橋屋をひいきにしていた)吉川英治先生の息子さんがいらっしゃった時は大興奮でした」

仕事でもプライベートでも、船橋屋どっぷりの佐藤さん。「豊かな歴史を持つ会社で、やりたい仕事ができていることは本当に幸せです。でも、それはただ『運が良かった』わけではない。何もしないでいて好きになるわけではなく、自分で調べ、知ろうとすることでどんどん好きになる。そっちが先だと思うんです」

■役員の素顔に迫るQ&A
スマホ待ち受け
写真=プレジデントウーマンオンライン編集部撮影

Q 好きな言葉
「我以外皆我師」(われいがいみなわがし)。「自分以外はみな、自分の先生だと思って接しなさい」という意味。船橋屋の大看板の字を書いてくださった吉川英治先生の言葉です

Q 愛読書
芥川龍之介『本所両国』船橋屋が登場します!

Q 趣味
船橋屋の歴史研究

Q Favorite Item
船橋屋5代目奥様、6代目の写真。スマホの待ち受け画像にしています

文=元川 悦子

佐藤 恭子(さとう・きょうこ)
船橋屋 執行役員 企画本部長

1981年生まれ、埼玉県坂戸市出身。十文字女子学園大学卒業後、2004年船橋屋入社。小田急百貨店新宿店和菓子売り場、「こよみ」広尾店立ち上げ、通販事業部立ち上げ、組織活性化プロジェクト(新卒採用担当)などを経て、2015年に社員総選挙で選ばれ執行役員就任。2016年から一般社団法人「くず餅研究所」研究担当を兼務。2019年株式会社くず餅乳酸菌LABOを設立し取締役就任。乳酸菌発酵化粧水など新事業を多数手掛ける。2019年に結婚した夫と2人暮らし。