コロナ禍の悪影響は女性に集中した
分析の結果、25~54歳で結婚しており子どものいる女性の就業率が、昨年の4月以降、コロナ禍のために4%ポイントも大幅に下落したまま、12月になってもほとんど回復していないことが明らかになった。一方で、同年齢層で、結婚して子どものいる男性の就業率は、まったくと言っていいほど影響を受けていない。両者について見る限り、コロナ禍の悪影響は女性に集中していたことになる。
子あり女性の就業率が下がった2つの理由
結婚して子どものいる女性の就業率が大きく落ち込んだ理由で、特に重要なものが二つ挙げられる。一つ目は、多くの女性が対人サービス業に従事していたという点である。飲食、宿泊、小売などの産業で働く女性は多いが、これらの産業はコロナ禍により大打撃を受けた。結果、女性労働に対する需要が激減したのである。
二つ目は、女性が子育ての大きな責任を担っているという点である。昨年3月から5月末ごろまで、ほとんどの小中学校は休校していた。それに合わせるように、多くの保育施設も休園しており、未就学児から小学生の子どもを持つ家庭を中心に、休校中に子どもの世話をする必要が生じた。日本では性別役割分業がはっきりしているため、母親が休校中の子どもの世話をしなければならず、仕事を休む、あるいは辞めざるをえなくなったと考えられる。
これらの要因はどれくらい重要なのだろうか。特に後者は、休校を行うべきかどうかを判断する上で欠かせない情報だ。休校のせいで、どの程度、就業率が落ち込んだのかを推定するために、25~54歳で結婚している女性のうち、未就学児から小学生までの子どもを持つ女性と、子どもを持たない女性を比較した。
上で挙げた二つの理由のうちの一つ目、つまり、女性労働に対する需要減少は、子どもの有無にかかわらず影響する。一方、休校は子どものいる女性には影響するものの、子供のいない女性には影響しない。したがって、両者を比較することで休校の影響だけを推定することができるというのが基本的な発想だ。
一斉休校の影響で就業率が3%ポイント低下
もちろん、両者の間で年齢、学歴、居住地、産業、職業、さらには雇用形態が異なる。しかし、これらの要因については統計学的に取り除いてあるため、分析上、支障はない。
子どもを持つ女性と持たない女性の就業率に対するコロナ禍の影響を見てみると、両者とも就業が減っている。しかし、その度合は、子どもを持つ女性のほうがかなり大きい。この差が休校の悪影響であり、就業率を3%ポイントも低下させた。そして、この効果は学校が再開されて半年以上たった昨年12月でも消えていない。