失業ではなく「非労働力化」

詳しく統計を見てみると、就業をやめた母親たちは失業ではなく非労働力化したことがわかった。つまり、働いていないが、仕事を探しているわけでもないということだ。なぜ非労働力化が進んだのだろうか。調査の限界もあり、明確な答えは今のところわからないが、ここでは三つの可能性を指摘しておく。

一つ目は、働きたいと思っているが、景気が悪化しているため仕事を見つけられないと思ってあきらめてしまい、仕事を探していないという可能性だ。これは統計上、失業に分類されないが、労働市場の悪化に起因しており、失業に似たものとして理解される。

二つ目は、しばしば感染状況が悪化するため、たとえ働いたとしても、再び休校が行われたら、また仕事を辞めなければならないと考えている可能性だ。どうせすぐに辞めなければならなくなるのなら、あえて働かないと考えるのも無理はない。

三つ目は、コロナ禍で子どもたちもストレスにさらされており、普段以上に手厚いケアが必要と考えているため、仕事に復帰しない可能性だ。

シングルマザーは失業が増えた

このほかにも、筆者らはシングルマザーに注目した分析を行った。やはりシングルマザーについても、コロナ禍のために就業率が大幅に悪化しているが、非労働力化が進んだのではなく、失業が増えていたことがわかった。結婚している女性は、多少なりとも夫の所得を当てにできるかもしれないが、シングルマザーは自身が働くよりほかないためだろう。