「ちょっとだけ異常値」が示す「すごくまずいこと」

血圧だけでなく、40歳を過ぎた頃から、健康診断での「ちょっとだけ異常値」が多くなります。血糖値が高め。コレステロール値が高め。尿酸値が高め。BMI値が高め……。「どれもこれもあてはまる」という人もいるかもしれません。

かなりの異常値を示したなら、嫌でも治療を受けるでしょう。ところが、なまじ「高め」程度で収まっていると、「まあ、いいや」と放置してしまうことになります。このことが、あなたの解毒能力を確実に低下させていきます。そうして最後には、繊細で複雑な機器(臓器)である腎臓を壊してしまうのです。

風邪を引いたとか、お腹を壊したというなら、病院で治療を受けなくとも、持ち前の免疫力で治すことができます。しかし腎臓は、安静にしていれば自然に良くなるなどということはありません。放置していたら指数関数的に悪化に向かい、「解毒能力ゼロ」という終着点だけが待っています。

やっかいなのは、そんな状態になるまで本人はもちろん、医師でさえ気づかないこと。そのため次の2つが極めて重要になってきます。

①「ちょっとだけ異常値」を放置しない
②「ちょっとした不調」(だるさや吐き気、不眠、イライラ、頭痛、集中力や思考力の低下、口臭……)を軽く考えない

何かしら変調があったら、「もしかしたら解毒力が落ちているのかも」「これって腎臓と関係しているのかも」と考え、行動に移す。それこそが、あなたの10年後のために非常に大きな意味を持ちます。

20万人を診てわかった健康を奪う「医学的大問題」

私は、大学病院の勤務医時代から、クリニックを開設し今日に至るまでの40年間にわたり、のべ20万人以上の患者さんを診てきました。患者さんのバックグラウンドは実に多様で、感じ取れる人生観もそれぞれです。

しかしながら、診察経験を通し、どんなケースであろうとも、人間にとってなによりも重要なことは2つあると感じています。

1つは「死なない」こと。
もう1つは「ぼけない」こと。

この2つをクリアしていれば、何歳であろうとも、多少の持病を抱えていても、それなりに充実した日々を送ることができるからです。

「わかっているよ。だから日頃から食べ物に気をつけたり、運動をしたりしているんだ。けれど、年齢とともにいろいろな不調が出てきてしまうんだ」こんな嘆きが聞こえてきそうです。

私はこれまでも、健康を維持するための食事法などについて、多くの著書を出版してきました。姉妹編でベストセラーになった『医者が教える食事術 最強の教科書』(ダイヤモンド社)をはじめ、たくさんの読者の方に手に取っていただき、みなさんの健康意識が確実に高まっているのを肌で感じています。

一方で、そうした人々の頑張りを水泡に帰してしまうような「医学的大問題」が、静かに、しかし着々と進行しています。それこそが解毒能力がいちじるしく低下する「慢性腎臓病」であり、一見、健康な人たちに浸潤しんじゅんする「沈黙の病」なのです。