信頼はするけれど、信用はしない。管理職としての責務を痛感
小島さんは店長を経て、管理職に昇進。信頼する部下に店長を任せたが、思うように管理・育成ができず悩むこともあった。ユニクロ時代の経験を活かし、部下とのコミュニケーションを大切にしてきただけに余計に悩んだが、しかし、そんなときには「当人だけが悪いわけではなく、私自身も指導の甘さ、すべき管理の甘さがあるのだ」と管理職としての責務を痛感。
相手の能力を信じて頼りにする信頼はしても、相手や相手のいうことが確かであると信じて疑わない信用はせず、業務の確認を怠らないことを心に刻んでいく。部下たちに対してもきちんと目配りし、前向きな気持ちで仕事に取り組めるように努めた。そうして自分も変わるなかで、メンバーの成長をより感じられたのは、育休後に復職したときだった。
キャンプ体験で伝えたい「私たちの人生には何が必要なのか」
小島さんはスノーピーク入社前に、交際していた彼と結婚しており、2019年10月に男児を出産。翌年6月に時短勤務で復帰した。当初は以前のようにパフォーマンスを発揮できない不安もあったが、職場の仲間が頼もしくカバーしてくれる。自分も肩の力を抜いて、できることを精一杯取り組もうと思うようになった。
そして今、まさにコロナ禍の中で子育てと仕事の両立に励む小島さん。いずれも未知の経験ではあるが、こんな時代だからこそ仕事の意義も感じている。
「今は人と人との関わり合いが難しくなっているなかで、キャンプに興味をもって始める方たちが増えています。そこで自然の持つ力や人と人が関わることの素晴らしさをより感じられるのではないかと思うのです。キャンプというのは自然との付き合い方を学べる場であり、家族や仲間との絆を深める場でもある。私たちの人生に何が必要なのかということを、スノーピークを通じて伝えられたらいいのかなと思っています」
小島さんも息子が1歳の誕生日を迎える頃、家族でキャンプに出かけた。キャンプ・デビューした息子は「すごく楽しそうでした」とほほ笑む。夫とともに使い続けてきたキャンプ道具は使い込むほどに愛着がわき、息子にもどんどん体験させたいと思っている。スノーピークの道具は世代を超えて子どもたちに受け継がれ、家族の思い出とともに大切にされていくのだという。
1964年新潟県生まれ。学習院大学卒業後、出版社の編集者を経て、ノンフィクションライターに。スポーツ、人物ルポルタ―ジュ、事件取材など幅広く執筆活動を行っている。著書に、『音羽「お受験」殺人』、『精子提供―父親を知らない子どもたち』、『一冊の本をあなたに―3・11絵本プロジェクトいわての物語』、『慶應幼稚舎の流儀』、『100歳の秘訣』、『鏡の中のいわさきちひろ』など。