深い人間関係を知らないZ世代
これは人間関係を築こうとする時も同じです。例えば最近、あだ名で呼ぶことを禁止した小学校が話題になりました。昭和世代からすれば、あだ名は親しみを表したり距離を縮めたりするものですが、今はベンチャー企業でもあだ名禁止のところがあります。また一般企業でも、部下をあだ名で呼んでいた上司が、人事部から注意されたという話も聞きます。
「それでは深い関係が築けない」と思う人もいるでしょう。でも、Z世代にとっては人間関係=広く浅くが当たり前。SNSでたくさんの友人とつながっていても、いつも一緒に行動したり本音を言い合ったり、時にはケンカしたりという関係はほとんど結びません。そもそも「深い人間関係」が存在すること自体知らないのでは、と思うことさえあります。
「飲めば理解し合える」は通用しない
そのため、昭和世代の上司がZ世代の部下と深い関係を築こうとしても、部下にとってはその姿勢自体が意味不明。昔は「立場が違ってもとりあえず飲めば理解し合える」と言われたものでしたが、今の若者はそもそもお酒を飲みたがりませんし、上司と理解し合いたい、仲を深めたいとも思っていないのです。
その反面、Z世代には浅いつながりを求める傾向が顕著です。例えば2020年は、コロナ禍による外出自粛以降、人と対面で会えないストレスを解消する「実際に会っているかのような感覚を味わえるツール」が、若者の間で多数流行しました。
離れた場所にいる友人とNetflixの作品を同時に視聴することは「ネトフリパーティー」、オンライン飲み会用のアプリは「飲みアプ」などと呼ばれています。これらはいずれも、オンラインでの対面をリアルで会っている感覚に近づけるもの。コロナによってZ世代の中に生まれたニーズのひとつで、その感覚を表すキーワードとしては「ニアリアル」「0密(ゼロみつ)遊び」などが挙げられます。
昭和世代との決定的な違い
特に「ニアリアル」という言葉は、僕たち大人とZ世代との考え方の違いをよく表していると思います。外出自粛を経て、大人の中には仕事をすべてリモートワークに切り替えて移住する人も出てきました。これは、オンラインがリアルの代替になり得ると考えているためで、ある意味ネットに夢を抱いている証とも言えるでしょう。
しかし、Z世代では「オンラインはリアルの代替にはならない」「直接会えるならそのほうがいいに決まっている」という考え方が主流です。子どもの頃からネットに親しんで育ったためか、オンラインはどんなにリアルに近く見えても「ニアリアル」でしかないと、肌で知っているのです。