「叱る」という概念はすでに消滅
では、この「チル&ミー」なZ世代が部下になった時、昭和生まれの上司たちはどう接すればいいのでしょうか。一般的に、昭和世代は「時には叱るのも愛」と考える傾向にあります。自身も先輩や上司から叱咤激励されて育ってきたため、部下を伸ばすには愛の鞭も必要ではないかと思うわけですね。かく言う僕自身も、長い間そうした考え方をしていました。
ところがここ10年ほどは、若者を伸ばすには「ホメる9割、改善提案1割」と言われるようになってきています。ただ叱るのではなく「君はすばらしい、でもここをこうしたらもっとすばらしくなる」という言い方をすべきだと。
僕が最近Z世代の若者や企業の方々と話していて思うのは、「叱る」という概念すらもう消滅しているのではないかということ。Z世代の若者は叱られた経験がほとんどないためか、叱っても気が引き締まったりやる気が出たりすることはないのだそうです。彼らのモチベーションが上がるのは気持ちよくしてもらえた時、つまり自己承認欲求や発信欲求が満たされた時なのです。
人事部に「通報」する若者も
プロ野球の野村克也監督は、人を育てるための極意を「無視・賞賛・批難」という言葉で表しました。選手のうち三流は無視し、二流は賞賛し、一流は批難して伸ばすのだと。僕も深く共感している言葉ですが、今の若者には無視と批難は通用しません。若者からすればその2つはあってはならないことで、中には人事部に「通報」する子もいると聞きます。
僕がアルバイトを頼んでいる大学生の中には、得意先とのミーティングをすっぽかしてしまう子もいます。周りにも迷惑がかかるため厳しく注意したいところですが、彼らに対して「怒る」「叱る」はNG。さらに言えば、パワハラの証拠として使われるリスクがあるので、LINEやメールでの批難も避けるようにしています。
ですから、「そういうことをしてはいけない」と教えたい場合は、口頭で丁寧に注意するか、LINEやメールなら必ず敬語で、こんこんと説明するのが得策。新人にそこまで気を使わなきゃいけないなんて……と思う人も多いでしょうが、僕の実感から言うと、良いと思ったことも許せないと思ったこともすぐシェアする、それがZ世代です。