官公庁や金融機関、一般企業も分散休暇を

医療ニーズを集中させる側も一斉休みの危うさを認識して、「一斉」の是非を再考してほしいと思います。「いやいや、そんなことを言っても肝心の官公庁や銀行も休みだし仕事にならないよ」と思うかもしれませんね。確かに今は土日祝日や大型連休中は、公的機関の機能が停止し、銀行や企業も休日を合わせざるを得ない状況になっています。となれば極論かもしれませんが、官公庁が率先して365日対応の体制をつくったらどうでしょうか。

もちろん、今の人員で働き続けろと言っているわけではありません。完全週休二日制を義務化して、なおかつ年中無休の体制を維持するだけの公務員数を確保したうえでの話です。別にカレンダーの赤い文字に従って休む必要はありませんから、Aさんは週半ばの水曜日と日曜日に休む、Bさんは火曜日と水曜日で連休をとる、など柔軟なシフトが組めるでしょう。

当然ですが、こうした大がかりな改革を行うには、国民のコンセンサスとともに法律の改正など抜本的な制度改革が必要です。公務員を目の敵にして人を減らせと言っている一部の政党と、その支持者からは批判を浴びることでしょう。しかし、公務員や国立・公立の医療機関、そして地域の保健衛生の要である保健所の人員を無策に減らしてきた結果が、現在のコロナ禍の一因であることは明らかです。むしろ公務員の人員確保と人件費の拡充をこれまで以上に充実させる必要があるのではないでしょうか。

休み方改革は働き方改革に通じる

COVID-19は私たちが惰性で「常識」としてきた慣習の再考を迫っています。「土日祝日廃止」──「日本全国、年中平日化」、つまり「365日いつでも休める化」によって、人の流れが分散化すれば、観光地だけでなく交通機関、各種サービス業、医療機関への「同じ期間内での過集中」がかなり緩和されるでしょう。単に「3密」の解消というだけでなく、人の集中にともなう荷重労働、超過勤務を緩和させる効果も期待できます。

当然、事業主の悪用を防ぐために労働法制の見直しも必要です。これまで休日出勤の超過勤務手当等でようやく生活費を稼いでいた分をベースアップすることも忘れてはいけません。休日の見直しは、そのまま働き方改革の議論にも通じるのです。

私たちは、コロナ禍で実施せざるを得なかったリモートワークがけっして絵空事でなかったことを知り、「仕事は会社に通勤して行うもの」という常識が絶対ではないことに気づきました。休日の見直しも同じことです。一見、暴論に思えるかもしれませんが、この「土日祝日廃止」のメリットとデメリットを当事者として吟味し、自分たちの生活に良い循環をもたらす可能性があるのかどうか、考えてみませんか。もっと自由かつ柔軟に、今よりももっと多くの日数を皆で代わる代わる休めるようにするには何が必要なのか。この年末年始はそこを考え、実現に動き出す好機です。

構成=井手ゆきえ

木村 知(きむら・とも)
医師

1968年生まれ。医師。10年間、外科医として大学病院などに勤務した後、現在は在宅医療を中心に、多くの患者さんの診療、看取りを行っている。加えて臨床研修医指導にも従事し、後進の育成も手掛けている。医療者ならではの視点で、時事問題、政治問題についても積極的に発信。新聞・週刊誌にも多数のコメントを提供している。2024年3月8日、角川新書より最新刊『大往生の作法 在宅医だからわかった人生最終コーナーの歩き方』発刊。医学博士、臨床研修指導医、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。