一斉休業・帰省という、なかば「常態化」した「異常」

そもそも政府が国民の休む日を「指定」あるいは「指示」すること自体が、時代錯誤も甚だしいの一言です。しかし一連の騒ぎで強く感じたのは、「年末年始に限らず、盆暮れ、ゴールデンウィークなど特定の時期に休みが集中する『なかば常態化した異常事態』は、改善されるべきだ」ということでした。

搭乗ゲート
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2019年に発刊した拙著『病気は社会が引き起こす インフルエンザ大流行のワケ』(角川新書)でも触れましたが、毎年の年末年始は公的医療機関のみならず、町の診療所もこぞって休日診療体制、あるいは休診になります。

当然、急病やケガを負った患者さんは休日でも診療をしている数少ない医療機関に殺到し、その医療機関はまさに「過密」状態。「3密」どころではありません。例年であれば季節性インフルエンザが大流行して、医療ニーズが1年で最も高くなる時期に最も医療体制がぜい弱になる、という考えられない状況が何ら改善されることもなく、毎年、繰り返されているのです。まして今年はこれにCOVID-19への対応が加わるわけですから、悲惨な状況が今から目に見えるようです。

元旦前後を全国一律に休日にする必要はどこにあるのか

確かに伝統的な行事を通じ、気持ちを新たにして新年を迎えたいという気持ちはわかりますが、リスクを無視してまで、元旦前後を全国一律に休日にする必要はあるのかと頭を抱えてしまいます。元日といえども、1年365日のうちの1日に過ぎません。国民がこぞって特別な意味を込める必要があるのか、コロナ禍を機に「正月休み」という考え方からゼロベースで見直す議論をしてもいいのではないでしょうか。

たとえば、入院病棟勤務の看護師や介護職など24時間、365日の対応が必要な職種では、同じ施設内で暦に関係なく「去年のお正月はAさんが当直したから、今年はBさんね」など、交代、分散して休暇を取る体制ができあがっています。年末年始に限らず、ゴールデンウィークやお盆期間中も同様です。つまり、エッセンシャルワークと呼ばれる年中無休の職種こそが休日の分散化をすでに進めていたわけです。さらに今後、地域の診療所や中小病院が互いに調整しあって分散休診方式を採用すれば、常態化している大型連休中の「医療の空白期間」も解消するでしょう。今回のコロナ禍を機に各地域の医師会は率先して分散休診について今すぐ早急に議論を開始し実行にうつすべきです。